7 / 49

6.『scene』

春の嵐の先触れが桜の花びらを巻き上げ旋風を起こした。 まただ。 強く目を瞑り、引き絞られる胸の痛みに耐える。 この目をあけたらあの人が居るのではないか。 淡い期待と絶望の予感で鼓動が早くなる。 いる訳がない。 でも約束を交わした。 千々にちぎれる想いで胸が張り裂けそうだ。 小指からの血の色の糸はほつれ絡まり、先が繋がっているのかも分からない。 過去と未来を結ぶ河。解けてしまった小指。あの時握っていた蕾からは何の花が咲いたのか。 分からない。分からないまままた永い孤独に耐えるのか。 また出会えないまま終わる? 自分ではない自分の哀しみに引っ張られ、今年もまた桜と共に 思い出せない貴方を待つ

ともだちにシェアしよう!