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6.『scene』
春の嵐の先触れが桜の花びらを巻き上げ旋風を起こした。
まただ。
強く目を瞑り、引き絞られる胸の痛みに耐える。
この目をあけたらあの人が居るのではないか。
淡い期待と絶望の予感で鼓動が早くなる。
いる訳がない。
でも約束を交わした。
千々にちぎれる想いで胸が張り裂けそうだ。
小指からの血の色の糸はほつれ絡まり、先が繋がっているのかも分からない。
過去と未来を結ぶ河。解けてしまった小指。あの時握っていた蕾からは何の花が咲いたのか。
分からない。分からないまままた永い孤独に耐えるのか。
また出会えないまま終わる?
自分ではない自分の哀しみに引っ張られ、今年もまた桜と共に
思い出せない貴方を待つ
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