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13.『秘めごと』

学校帰りに通る川沿いの並木道を遥斗と並んで歩く。 ちょうど桜が満開で、風に煽られて散った花びらがくるくると円を描きながら俺たちの頭上を踊るように舞う。そんな花びらを目で追っていた遥斗が何かに気づいたように笑いながら手を伸ばして俺の髪に触れた。 「ははっ、花びらついてた」 何にも知らないくせに。そんなふうに気安く触れてくんなよ。 「どうした?なんか顔赤い。熱でもあるのか?」 遥斗は俺の顔を覗き込んで、額に手を当てて、よくわかんねーみたいな顔して。今度は「どれ?」なんて言いながら俺の額に自分の額をくっつけて来るんだ。 「近けぇよ」 遥斗の唇がちょっと動いたら触れそうなくらい近いとこにあって。ほんのりとだけど遥斗の息が唇に掛かって。心臓あり得ないくらいバクバクして口から飛び出そうになってんのに、俺はそれを必死に誤魔化すんだ。 「……なんでもないから」 そう発した言葉はいつも通りだったかな。 その唇を奪って押し倒して、おまえを全部俺のものに──本当はそんなことばっか考えてんの遥斗が知ったら、もう友達じゃいられなくなんのかな。 そして俺は今年も桜に願うんだ。遥斗がこのまま誰のものにもなりませんように、と。

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