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16.『あなたのためにだけ咲く』
初めて咲かせた白い花をかわいいと褒めてくれた
散った白い花弁をその手に集めてくれた人
翌春になり、なぜか咲いたのは濃紅色の花
その春からあの人は いなくなった
あの人が褒めてくれた白い花を咲かせたい
願い続けて何年、何十年……
百年を何度越えただろうか、白い花が咲くことはなかった
老木となった私が花を咲かせるのはこれが最後
白い花を咲かせたい、願いはあの人と……
願って、願って、願って
数千の花の中でたったひとつ
たった一つ白い花が、咲いた
その瞬間
あぁ、やっと戻ってきてくれた
「待たせたね」
そう言うと、白い花を枝ごと引き寄せた優しい手が、その枝を手折る。
ありがとう
これであなたと一緒に……
太い老木に残した数千の花は、ひとつ残らずその色を真っ白に変え、そして散った
優しい手に折られた枝に、咲く花を残して
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