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17.『桜の妖精』

「陽ちゃん、かわいい!桜の妖精みたい!」 「当然だろ。メイクにどんだけ時間かけたと思ってんだよ」  カメラのシャッターを切りながら褒めちぎる幼なじみ克彦の言葉を受け流しつつも、内心俺は嬉しくてたまらない。  満開の桜の木の下でポーズを取る俺は、声さえ聞かなければ、どこから見てもカンペキな女の子だ。モコモコ素材の白いパーカーにピンクのミニスカート。アクセもメイクもネイルもピンク色の桜コーデだ。  正直やり過ぎだと思うけど、男の娘キャラでやってるSNSではあざといくらいの方がウケがいいし、何よりも片思いの相手の克彦がこういうのが好みなのだから仕方ない。 「あ、そうだ。帰る前に桜の花びら拾ってくからな」 「いいけど、何に使うの?」 「ああ、ご褒美用の小道具にな」  ご褒美というのは、いつも俺のカメラマンをやってくれる克彦へのお礼に撮らせてやっているSNSには載せられないような写真のことだ。 「体に花びら散らして、その上にぶっかけるのとかどうよ?純潔散らされた桜の妖精、って感じでさ」  俺が克彦の褒め言葉から思いついたアイデアを話すと、克彦はその絵面を想像したのか、ゴクリとのどを鳴らした。

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