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「それで」
男は昴にのしかかったまま真剣な眼差しで見下ろしてきた。
「ここからどうしたらいい?」
「は?」
「初めてだからわからない。昴が教えてくれ」
男の言葉に昴は絶句した。
自分から襲ってきたくせに、まさかその手順を襲った相手に訊ねてくるとは思ってもみなかったからだ。
あれだけ啖呵を切ってきたくせにおかしな奴だ。
その上自分には経験がないと堂々と告白してきた。
仮にもしもこの男に経験がなかったとして、自らその事を打ち明ける強姦魔なんているだろうか?
物盗りでもない強姦魔でもない。
だとしたらまさか…本当に亜鷹?
浮かんでは消える疑問に、そんなはずはないと言い聞かせる。
男は至って真面目な面持ちで告げてきた。
「お前が気持ちよくなるように全力を尽くす」
「やり方がわからなきゃしなきゃいいだろ」
「それは嫌だ」
支離滅裂な男の行動と言動はまるで子供のようで、次第に怒る気力とともに警戒心も薄れてきた昴はやれやれと溜め息を吐いた。
「なんでだよ」
「なんでって…好きだからに決まってるだろ」
直球すぎる言葉に昴は再び絶句した。
まだ会って間もない名前も知らない男に告白をされるなんて思ってもみなかったからだ。
亜鷹だという証拠はどこにもないし、信じているわけではない。
しかし、男は決して昴をからかってるようにはみえない。
それじゃあ何か意図があるのだろうかと考えあぐねていると、男は痺れを切らしたように昴が身につけている野袢天 と呼ばれる丈の短い着物を解きはじめた。
「ちょ…っやめろよ!」
「もういい、教えてくれないなら好きに触る」
どこを解けばすぐに崩せるかがわかっているかのような鮮やかな手つきであっという間に衣装を剥かれ、股引の中に男の手が潜り込んでくる。
「ちょっとま…っあっ」
思わず声を出してしまいそうになり咄嗟に唇を噛みしめた。
まだ柔らかなそこを男の手がぐにぐにと揉んでくる。
「昴はいつもここをこうやってた」
まるでいつも昴がしているのを見ているかのような言葉に顔がかぁっと熱くなる。
「なんで…知ってるんだよ」
「俺たちは眼がいい。知ってるだろ」
男はニヤリと笑うと今度は下着の中に手を入れてきた。
布越しとは比べものにならないくらいダイレクトに響く悦楽。
どこをどうしたら気持ちよくなるか知っている自慰にはない、予測できない動き。
人にされるというのはこんなに気持ちいいものなのか。
昴は生まれて初めて人の手によって生み出される快楽を知って陶然となった。
探るように亀頭を撫でまわされて、滲み出た愛液を屹立全体に塗りつけられる。
切れ込みをなぞるように往復されて、昴は思わず腰を突き上げてしまった。
やり方がわからないなんて言っていたくせに男の手管は巧みで、探りながらも確実に昴の弱い場所ばかりを責め立ててくる。
「こうすると気持ちいいのか?ビクビクしてる」
シュッ、シュッとリズミカルに上下に擦られて、昴はろくに抵抗もできずに喉を反らせた。
「はふ…っん、ん…っ」
甘い声が漏れてしまいそうで必死に唇を結ぼうとするが、与えられる快楽に耐えきることができない。
「は、っ、だめ…はあっ…あっ、そんなに擦ったら…」
下腹部から込み上げてくる射精感に昴はシーツを握りしめて仰け反った。
他人に触れられるということがなかった身体が、その容赦のない責めに抗えるはずがない。
「出る…っふあ、っ、…ん、あんんっ!!!」
昴は悩ましげな声を上げるとあっけなく精を吐き出してしまった。
絶頂後の余韻で肩で息を吐く昴の目の前で、男は汚れた手の平をじっと見つめた。
そして昴の顔とその汚れた手を見比べるとなんの躊躇いもなくそれを口に含んだ。
「な…舐めるなよっ」
「…なんでだ、凄く美味い」
平然と言う男にまた惑わされて、昴は全身を真っ赤に染めた。
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