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「俺もなんだか熱くなってきた…」 はぁ…と男が熱っぽく息を吐く。 切れ長の目元が上気しているのが妙に色っぽくて昴は思わずドキッとしてしまった。 上着を煩わしげに脱ぐと、逞しい肉体が露わになる。 ふと、どこからか落ちてきた羽根がひらひらと昴の胸に舞い落ちた。 見覚えのある模様と色に昴はハッとした。 「…亜、鷹?」 その瞬間、何かがブワッと弾けた。 漂う空気の匂いが明らかに変わり、今まで嗅いだ事のない甘く濃厚なものが鼻腔を突き抜け脳天を直撃する。 「あ…あ、なんの匂い……」 その強烈な香りは昴の肉体を内側から無理矢理抉じ開けてきた。 硬く閉ざしていた蕾が一気に綻ぶような解放感。 昴は背筋を震わせるとじわじわと熱くなってくる身体に戸惑った。 発情期(ヒート)? しかしいつもの発情期と少し違う気がする。 男が熱っぽく息を吐くと、それに呼応するように昴の息も荒くなるのだ。 戸惑いながら男を見ると、潤んだ視界の中で首筋や胸元から羽のようなものが舞い上がっているのが見えた。 それは掴むことができない幻覚のようなものだったが、昴にはそれがなんであるかわかってしまった。 匂いだ。 男の首や胸元から、無数のが飛散しているのだ。 どうして匂いがそんな形になってのかわからないが、むわっと広がる甘ったるい匂いに煽られるように、血がぶくぶくと沸騰してマグマのように熱くなってくる。 下腹部が疼き思わず足を擦り合わせると、後がヌルつくのがわかった。 濡れている。 男の発する匂いに煽られて、自分も発情期のような状態になっているのだ。 「昴…っ…凄い、匂いだ」 苦しげに呻くと、男を纏う匂いが濃くなる。 そこで昴はようやく気がついた。 男がα性であることに。 強くて強靭で圧倒的な力のあるα。 初めて嗅ぐ匂いなはずなのに、昴は何故かこの匂いがαのものである事を知っていた。 それは昴がαとは反対性であるΩだからだろうか。 理由はわからないが、今まで一人ひっそりと発情期を凌いできた昴にとって、αの匂いというものは強烈で凄まじいものに違いはなかった。 こんな匂い一度嗅いでしまったら抗えない。 次第に抵抗する気力もなくなり、むしろ何もかも明け渡してしまいたくなってくる。 四肢を投げ出した昴は男を熱っぽく見上げた。 男もまた、昴を熱の籠った眼差しで見下ろしてくる。 自然と唇が重なり、唾液を絡めながら密度を深めた。 クラクラしそうだった。 匂いと、唇から生じる悦楽に頭の中がトロトロに蕩けてしまいそうになる。 後ろが疼き、愛液がシーツまで濡らしているのがわかった。 男は性急な手つきで下肢を寛げると自らの怒張を育てはじめた。 息を荒げながら、自分の屹立を上下に擦る男の行為に目が釘付けになる。 鋭い眼差しにジッと見据えられて、昴はゴクリと唾を飲んだ。 αの剥き出しの欲望、いや、まるで猛禽独特の獲物を狙う時の眼差しだ。 「昴、足広げろ」 本来なら、そんな恥ずかしい言葉に従うはずがないのにαの匂いに充てられた昴は、大人しく男の前に足を広げた。 乱暴に服を剥ぎ取られ、濡れてヒクつく後孔を晒される。 また羽が舞うのが見えて男の匂いが強くなった。 「…っ…」 男は低く唸ると、天を向いた凶器のようなそれを昴の濡れた後孔に当てがった。 グチュ…と果実を潰したような音がして、その硬くて熱い昂ぶりが昴の中に侵入してくる。 信じられないことに慣らしてもいないのにそこはまるで待ち侘びていたかのように綻び、男を喜んで迎え入れた。 「ん…くあ、あ、ああっ…あつ…」 初めて迎え入れる男根は熱くて硬くてまるで灼熱の肉の棒のようだ。 熱くて太くて、でもその狂気で中を一杯に広げられるのが気持ちよくてたまらない。 粘膜がうねり、歓喜に蠕動するのがわかる。 根元まで深く挿れると男は間断なく腰を揺らし始めた。 浮遊しては深くまで落とされ、また突き上げられて沈められる。 溺れるような感覚に昴はシーツの上でのたうちまわった。 「あっ、あぁっ、もっ、んんっあ」 結合部から卑猥な音とともに飛沫が上がり、どこからが自分でどこからが相手 なのかわからなくなる。 溶けあう、という事はこういう事なんだろうか。 人肌の温かさ、それは昴が初めて知る感覚であった。 「ごめん昴、優しく、したいのに…止まらない…」 切羽詰まったように繰り返しながら、男の腰が激しく打ち付けられる。 自らをコントロールができないのか情けないほど顔を歪めた男の表情に、心臓が揺さぶられた。 何度も口付けられ、身体中を好き勝手に揺さぶられて、しかし不思議と無理矢理されているという感覚はない。 「昴と…こんな風に繋がれて、夢みたいだ」 男は感嘆の溜め息を吐きながら昴の細い身体を掻き抱いた。 柔らかな羽毛に包まれるような、不思議な感覚がして昴も無意識に男の背中に腕をまわしていた。 「好きだ、昴…ずっと、ずっと好きだった」 ラストスパートのように激しくなる抽送の中、男の切羽詰まったような告白を何度も聞いた。 それは心地よく胸に響き、昴はわけもわからず泣きたくなってしまったのだった。

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