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しばらく泣いた後、ようやく気持ちが落ち着いてきた昴は途端に恥ずかしくなってきた。
人前でこんなに取り乱して泣くのは初めてだったし、よりによって亜鷹の前でなんてみっともなくて格好がつかない。
しかもよくよく考えると、亜鷹とは身体を重ねてから初めて顔を合わせていた。
今までそんな経験のなかった昴は、こんな時どんな反応や顔をしたらいいのかわからない。
一人悶々としていると、亜鷹がポツリと呟いた。
「触られたな?」
「え?」
「あのデカブツに触られたろ…」
犬鷲に触れられたことを思い出した昴は思わず口籠り視線を游がせてしまった。
亜鷹は盛大に舌打ちをすると、昴を押し倒しのし掛かってくる。
眉間に皺を寄せ不機嫌さを露わにする亜鷹を見上げながら、昴は慌てて厚い胸板を押し返した。
「ま、待ってよ…こんな場所でする気?」
「いやか?俺は我慢できない。今すぐお前からあの犬鷲の匂いを消してやりたい」
剥き出しの独占欲を見せつけられて、自分の顔が真っ赤に染まっていくのがわかる。
本当に亜鷹にはペースを乱されっぱなしだ。
抵抗する気力をなくした昴の無防備な首筋を、柔らかな唇が吸い付き味わうように舐め上げていく。
一気に体温が上がり、またあの甘い匂いが漂ってきて昴は悔し紛れに亜鷹の頬をつねった。
「その匂い、ずるい」
「それはこっちのセリフだ」
亜鷹はそう言うと、自分の着ていた上着を脱ぐとそれを昴の背中にそっと敷いた。
大切に扱ってくれてる事が嬉しくて、でもやっぱり気恥ずかしくてどうにかなってしまいそうになる。
数日前まで、日々を生きることに精一杯だった昴の人生は一変した。
こんな幸せが身近にあったのにどうして今まで気づく事ができなかったんだろう。
切れ長の眼差しが愛おしげに昴を見つめてくる。
「…好きだ、昴」
うっとりするほど甘い声で囁かれて、それだけで腰が砕けそうになった。
「今度は優しくする」
言葉通り腫れ物に触るように口付けられて、昴は亜鷹の首を強く引き寄せた。
「あ…んっ…んんっ…も、そこ、だめっ」
亜鷹のしなやかな指が二本、昴の後孔を弄っている。
浅い場所から指が届く限りの深い場所までを何度も往復されて、昴は切れ切れに喘ぎながらもうやだ、やめてと繰り返していた。
まさかここまでしつこく弄られるとは思ってもみなかったからだ。
「優しく…するって、言った、くせにっ…」
恨みがましく見上げると、亜鷹は飄々として答えた。
「優しくしてる。ただあいつの感触を消してるだけだ」
「そ…なっ…んんぁ…おかしくなる…っ」
もうそんな感触とっくに消えていて、昴の指にしか感じていないというのに。
「おかしくなればいい」
亜鷹はそう言うと中に埋めた指を内側でこの字に曲げてきた。
「あぁっ…やだ…中、指…曲げないでっ、ひぃああっ」
亜鷹が内側で指を曲げるたび、粘膜が擦れ下腹部からとてつもない快楽が込み上げてくる。
昨夜はあんなに切羽詰まっていたくせに、二回目だと余裕が出てくるものなのだろうか。
どっちにしろ昴は翻弄されてばかりだ。
「凄い、ぐしょぐしょだ」
亜鷹はくすりと笑うと、ぬれそぼった昴の陰茎をもう片方の手で握りこんできた。
新たに加わった刺激に一気に射精感が増し、昴は無意識に亜鷹の胸を押し返した。
前も後ろもなんていっぺんにされたらおかしくなる。
「ああぁっ……一緒は…やっ、やだぁ」
「嫌じゃないだろ。こんなに濡れて…どこもかしこも俺を誘ってるようにしか見えない」
亜鷹はそう言うと、屹立をゆっくりと扱きはじめた。
同時に膣壁の粘膜を指先でほじくられて凄まじい快楽に襲われる。
はしたないほど淫らな音に煽られて、昴は訴えた。
「んんっ、もう、ぃくぅ…っ、あたかぁあ」
鼻にかかった甘い声で亜鷹の名前を呼ぶと、後孔に埋まっていた指が引き抜かれた。
「もう少し我慢しろ」
自分の下肢を寛げると、雄雄しい昂りを引き摺り出した。
凶器のような男根の先端が先走りでヌラヌラと光っているのが目に飛び込んでくる。
後孔が激しく収縮してまた愛液を分泌したのがわかった。
「挿れるぞ」
ひくつく淫靡な孔に灼熱の塊が押し当てられる。
「ふ…あぁああぁっ…」
そこは驚くほど柔らかく綻び、亜鷹をすんなりと迎え入れた。
「繋がってるところが見たい」
太腿を割り開かれて腰を持ち上げられる。
「うぅ…っ…バカ、変態…っ」
羞恥のあまり悪態をつきながら両手で顔を覆うと、その手を無理矢理引き剥がされる。
ぐちゃぐちゃになったみっともない顔を間近で見られて、啄ばむように口付けられた。
「わかるか昴。お前の中、俺を締め付けて欲しがってる」
うっとりするような声色で囁かれて、昴は意識した。
亜鷹の言葉通り、膣壁が男根を味わうようにうねうねと蠢いている。
「もっと求めてくれ。お前が求めてくれると嬉しい」
素直に気持ちを口にする亜鷹に、昴の身体から力が抜けていく。
内側が蠕動し、愛しい人をもっと奥へ誘い込もうとうねった。
亜鷹は切なげに眉を寄せると、腰をグッと突き上げてきた。
「ここで、俺を受け入れてくれるか?」
恐々と訊ねてくる亜鷹に、昴は一瞬目を見開くとすぐに目を伏せて頷いた。
最奥にある生殖器。
ここに亜鷹を受け入れる事、きっとこれが番いの儀式なのだろう。
αとΩにしかできない番いの行為。
それは昴にとって夢にも思わなかった事だ。
深く挿入されたまま小刻みに揺さぶられて未開の奥地がゆっくりと綻んでいくのを感じる。
頭が真っ白になって息ができない。
しかし、揺さぶられるたびにこの上ない多幸感に満たされて涙が溢れた。
苦しい、けれど嬉しい。
「亜鷹…っ、好き、好き」
凄まじい悦楽と多幸感の中、亜鷹にしがみつくと我を忘れて口づけを強請った。
亜鷹はそんな昴を受け止め、望むがままに与えてくれる。
「俺もだ、昴…っ愛してる」
一際激しく突き上げられて、昴は歓喜の悲鳴を上げながら背中を反らせた。
身体の一番奥の深い場所に熱くて力強い飛沫を感じる。
昴は生まれて初めて自分がΩであることに喜びを感じる事ができた。
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