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アネモネ 第10話

そして、遂に初めて、ちゃんと山下さんと口付けを交わした。 俺の気持ちに応えてくれたことが素直に嬉しくて嬉しくて、他に何もいらないとさえ思う。 山下さんの柔らかな舌が歯茎を滑り、敏感な刺激に身体が震えた。優しい唇に蕩けそうになる。この人、とてもキスが上手だ。 「ふぁ、ん……あ……俺、初めて山下さんと普通にキスしました」 今まではセックスのついでにしていたぐらいで、口元から愛しさを貰ったことは無かった。 でも今は違う。山下さんの愛情を確かに感じる。 「……だな。改めて俺は最低だと思う。スマン」 「いいよ。元の山下さんに戻ったことが俺は嬉しい。だから山下さんも気持ちよくなってください、ね。あっ……」 もつれるように押し倒された俺は、山下さんの胸におでこを擦り付けた。懐かしい匂いがする。 山下さんの指がサラりと腹を撫で、胸の突起を引っ張ってつまむ。臍とお腹に沢山のキスが降りてきた。 下半身へ触れてもらいたいけど言えない。熱くなった身体に耐えるようキスへ集中した。 そう言えば俺の人生上、相思相愛でセックスをした経験が無い。性癖を押し付けるのは幻滅されたら嫌だけど、山下さんのは全て受け入れられる。 たぶんそれが好きってことなんだと28歳になって知った。 「あ、そこは……」 「嫌じゃないだろ。すごく触られたがってた。腰が動いてる」 「ひぇ、ぁっ」 やっぱりバレていた。 山下さんは器用にズボンを脱がす。完勃ちした俺のモノはピクリと動いた。大きな手でやんわりと扱かれる。おへそにキスを落とされ、後孔へ指が入ってきた。 負けじと山下さんのも脱がそうとするが、力が入らない。 「ん……はぁっ、きもち、い……出ちゃう、やだ……」 「まだ早いだろ」 「ぁ、ぁ、あ……、後ろは、もっとだめ……あん、あっ、や……いく……ぁ」 後孔に入った指がいやらしく入口を拡げる。瞬く間に果ててしまった。 「山下さん、後ろ……早く欲しい……」 「いいよ。こっち見せてごらん」 まだ指を咥えたまま、後孔はヒクヒクしている。四つん這いなるよう促された。恥ずかしいけど、触って欲しい。山下さんで気持ちよくなりたい。 「本当、こういう時の向田は別人みたいにやらしいな」 ローションを纏った2本目の指が中に入ってきた。 指が奥を掠める度に猫が伸びをするように腰が反る。 「……ぁあ、ぁ……ん、ぁ、や、ん……、ぁ、ぁ……そういうの、あんまり、いいから……」 「よくない」 いつも山下さんよがりのセックスだったので、丁寧にやられるのには慣れてない。そもそも俺自身が愛撫にも対応しきれていない。 ひとしきり後孔を捏ねくり回された後力が抜けた俺はくたんと横になった。

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