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第4話 いつからだろうか4

夢はいつも幸せだった。 僕の隣には必ず湊がいて、ぼくとの間には小さな命があって……。 そんな、儚くて悲しい夢を見る。 どうして、 Ωに産まれてきたんだろう。 夢から覚めたくない。   「葉月!!!!!!!」 稲妻のように叫ぶ親の声に飛び上がるように目を覚ます。 胸ぐらを掴まれ一瞬息が止まった。 「ッ!」 先程まで夢を見ていたからか頭が上手いこと動いてくれない。 「葉月!!!お前!!!」 ただ父親がキレていることと、母親がスマホを持って僕を睨みつけている現実が客観的に分かるくらいだ。 「お前!!!自分がΩだとバラしたな!ふざけるなよ!」 ガツン!と重い力が頬に入ってきた。 口の中が切れ血の味がする。 母の電話に 『はじめまして。お宅にΩがいらっしゃいますよね。』 っとかかってきたらしい。 殴りながら父がそう言っていた。 クラスの人が掛けてきたのか、はたまた違う人なのかは分からないが僕がΩであることを相手は知っている。 それが、父に殴られるよりも数倍怖い。 生きていけない。 湊…、…………。 昔みたいに助けてよ。 Ωなんて関係ないって言ってよ。 無抵抗な僕を両親は前のように家の一番奥の倉庫に放りなげた。 「余計な事はするな。お前は仕方なく生かしてあげているのだから。」 昔とおんなじ言葉を言って倉庫の鍵を閉めた。 顔の傷がなくなって、しばらく経ってから部屋に戻してくれた。 何事も無かったように久しぶりに学校に行った。 なんだか、みんなの顔がおかしい。ジッと僕を睨みつけてくる感じ。前よりも酷い。 クラスに入るとよりおかしく感じた。 「なぁ浦田。」 あの時、指を指してきた男が話しかけてきた。 なに。っと返す前に彼の方が速かった。 「なんで、休んでいたんだ?心配したよ。」 普通に話すにしては大きな声に違和感を感じた。 彼は、ニタァと気持ち悪い顔をしてより大きな声でこう言った。 「発情期かと思ったよ!!!!!」 嘲笑うような顔をみんながしてる。 藤守くんですら……………………。 嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ! 僕は首を横に振ることしかできなくて声がでない。 回りの声が大きくなって僕は居ても立ってもいられずに教室から逃げるようにして出ていく。 学校からも出るつもりで玄関の方に走る。 なんで? なんで! なんで。 いつから??? どうして? 怖い。怖い。怖いよ湊。助けてよ。 「よぉ!」 走っていく先に湊を見つけた! やっぱり、湊は僕の救世主……。 「みなぁ…………「みなとくんぅ!!おはよぉー」…!」 湊と呼ぼうとして湊の影から出てきた親友に遮られてしまった。 なんだか二人の関係を邪魔するみたいだと感じて、かすれた声で呼ぶしかなくて… 「ぁ……みなと…」 「あれぇー。ハズキじゃん」 呼んだのはみさきじゃないのに。 湊に…みなと…… 「よぉ~。ハズキ、久しぶりだな。」 助けて。助けて。辛いよ。僕…Ωってみんなに、みんなが知っていて… 「どうだ?みんなにΩだってばれる感覚は!」 「…ぇ?」 ……………… 何言ってるの? は? え? 目の前が暗くなった気がする。 考えてなかった訳じゃない。でも信じたくなくて。湊を信じたくて。 …どうして? Ωだということを知られるのはこの世界に居られないも同然 なぜ。どうして? あぁ。もう嫌だ。 頭の中がすぅ…っ、と冷えた。 ひくりと息が震えて、迫り上がってくるものを必死で抑えた。抑えても出てくるものに僕はこんなやつらに見せたくなくてまた足を動かした。 後ろでみさきと湊が笑ってるのを感じながら僕はどん底に落ちていく。

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