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第5話 迎えに上がりました。1
走って、走って。
でも、その場から逃げれたような気がしなくて。耳にこびりついて離れない残響がうるさい。
学校に居場所がない。
家にも居場所はない。
理由はΩだから。
……それとも、僕だから?
走り続けて日がくれて辺りが真っ赤に染まる。
僕の居場所がない…
αは3割
βは7割
Ωは1割にも満たない。
数少ないαとΩは特別な関係で結ばれている。
βにとったら都市伝説にすぎない
α、Ωにとったらおとぎ話のような出会いがある。
【魂の番】
強制的に引かれ会う運命
運命なんどうでもいい。ただ、僕を、僕だけを愛してくれるそんな存在がほしい。
家に帰ろう。僕がどんなにあがいても何も変わらなかったじゃないか。どんなに願っても誰も助けてくれない。
来た道を歩いてゆっくり戻る。
できるだけ、あの家にはいたくない。僕の居場所なんてないから。
辺りは真っ暗になってしまった。
「……ぁれ?」
暗くなって見えずらいが一台の車が家の前に止まっているのが見える。
こんな時間になんだろう?
玄関前、背の高いスーツを着た男の人と、両親が何か話しているようだ。
両親の顔は初めて見るほどの満面の笑顔だ。
「そうですか!でも、なんの見返りもなく渡すわけには行けませんな。こちらとてここまで育てるのにお金と時間がかかっているのですから。」
「もちろん、そういったことは当主は見越しておいでです。そちらに損のないよういたします。ですので…」
「そうですか!!!では是非にどうぞ!!!」
なんのこと。
「では…早速。」
クルリと回転して僕を見つめる。
まるで、僕がいることがわかってたかのように…
「はじめまして。葉月様ですね。」
人形のようにきれいな顔をした男性。
………………………………αだ。
「…な…何ですか?」
「あなた様をお迎えに上がりました。」
なんのこと。何をいってるの?
「葉月様はΩですね。」
!!!
なんで、知らない人にもばれているの。
なんで、両親は笑っているの?
「私たちは、暮らしにくいこの世界からあなた様を救うために来ました。私たちと一緒に来てくれますか?」
救う。
でも、そんなの…だって、もしかしたら、だけど
「もちろん、一緒にいくに決まっているだろう」
親が笑顔だ。
笑顔で、僕の部屋にあった荷物の入ったバックを渡してきた。
拒否何てするつもりもないのに。
どこにも、居場所はない。
僕は、誰かに…
「葉月様、当主はあなた様のことを必要としています。同時に、あなた様の居場所を見つけることが出きると思いますよ」
「…いばしょ」
僕がほしいものをくれるの?
当主ってこのαよりも上ってこと?
ほんとにくれるの?
ここにいるより可能性が少しでも高いのなら
僕は、首を縦に降る。
αの男の人はニコと笑い、では、この車にと言って僕なんかをエスコートしてくれる。
乗る前に
「葉月様、この家に必要な物はありますか?生活用品はこちらですべて用意しますが。」
必要なもの………
「…ありません」
また、ニコと笑って
そうですか
といって僕を車内に乗せた。
渡されたバックは誰も受け取らなかった。
…
…親に捨てられたってことになるんだろうか。
…恋人に裏切られたことになるのだろうか。
それらすらも、なんだかどうでもいい気がして、これから僕を必要としてくれる当主と言う方の方が気になった。
今度は、捨てられないように、裏切られないように
…頑張ろう。
頑張ろう。…うん。まだ、僕は頑張れる。
言い聞かせるみたいに何度も胸の中で繰り返した。
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