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第6話 迎えに上がりました。2

車が進みはじめてから、幾分か経って少し落ち着いたのがわかったのか少し話を始めた。 「御初にお目にかかります。私、豹の血を引くαになります。エヴァンズ・セサルと申します。本日から当主のホワイトニー・テオバルド様と葉月様の付き人兼、秘書をさせていただきます。よろしくお願いいたします。」 「豹の血?」 はじめて聞く言葉だ。なぜ人間に獣の血が関係があるのだろう? 「αは獣人がほとんどです。余り知られてないようですが…怖いですか?」 「怖くはないです。…ただ、なぜなのかな?って思って」 「怖がられてないようで安心しました。これから会う人は皆獣人ですからね。 では、着くのに時間がかかるので少し昔話でもしましょうか。βが多くなったご時世で知らないのは 仕方がないことなのかもしれませんが、知っていて損はありませんから。」 昔はβよりもαとΩの方が多かった。 αは雄であった。雌と子を守るために力があった。それが今も残っているためにαは優秀である。 Ωは雌であった。雄と子を守るために知恵があった。それが今も残っているがβのせいで使うことができない。 その二つは互いに番(つが)うことで強くなった。 βはフタナリであった。どちらかを捨てどちらかを誉める。 αは力があるがゆえに消えるのは難しい。だから今でも残っている。 人間と獣の血が混ざることでより強くなった。 Ωをβが貶すようになってしまった。 より、守る力が必要になった。囲うことで、番うことで守る方法。 「葉月様は【魂の番】がいることを信じていますか?」 魂の番喉から手が出るほどほしい存在。無条件で僕のことを愛してくれるんでしょ。でも、都市伝説にすぎない。 「あの…都市伝説の」 昔は僕のαっと願ってやまなかった。願っても、願っても一向に救ってくれないと気づいて回りの言う都市伝説なんだと理解した。 「まぁ、あのくそどもの中にいたらそうなるよな。」 ボソッっとセサルさんは何かいったが 小さな声で聞こえなかった。 「ゴホン。魂の番とは実際に存在します。現在2組の方が魂の番であると報告があります。 テオバルド様は18年前自分の魂の番がこの世に誕生したことを感じたそうです。 詳しくは話せませんが魂の番は貴方だった。 だから、お迎えに上がらせてもらったのです。」 「…僕の魂の番?」 ほんとに? 僕の…… 「葉月様?……こちらをお使いください」 渡されたハンカチで熱い目頭を押さえる。 鼻の奥が痛くなって涙が滲んだ。 βよりのΩであることが魂の番、相手にどう影響するか分からない。 愛し愛され、支え支えられる関係なのか本当はわからない。 未知で、不安はあるけれど… 僕を嫌いになっても絶対に離れていかないと言うことが僕の中にあった独占欲に似た何かが蠢いた気がした。

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