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第8話 魂の番1
自分はβではない。
ただ。βよりであるだけ。決してβではない。
自分はΩである。
それを僕は忘れたこと何てなかったのに。
彼を目の前にしてゾクゾクと今まで感じたことのない何かが背中を走る。
「はじめまして。テオバルド・ホワトニーだ。」
声を聞いただけでまた何かが走ってこれがα特有の力なのかと思った。
平民にαはいない。αは貴族で、その敷居はβ以下のものには高すぎる。知ることも、噂を聞くこともない。
ない存在として、いつの間にか忘れてしまった。いや、忘れようとした。自分より格段と強いものを。
空気が揺れると同時に鼓膜が擽られているようで…
こんなに離れてるのに…
「はじ…はじめまして。は、葉月です」
顔が熱い。胸がなんだか苦しい。
(………………会いたかった。)
ふとどこからかそんな気持ちがわいてきてその気持ちにより顔が熱くなった気がした。
コツコツと音を鳴らしながらこちらにやって来る。
恥ずかしいのと、このいつもと違う感じに顔を上げることができなくて俯いているとテオバルド様の足がすぐ近くまできてて余計にしたに向いた。
近くに来たからか強くなった匂いにめまいがしそう。
「顔を見せてはくれぬか?」
そういってるのは聞こえるのに、どうしても上げることができない。
絶対に変な顔してる。
この匂いは、なんか、なんか…
良くない感じがする。
胸の奥をくすぐるような。
お腹のしたの方が燻る気がしするような。
彼の手が僕の顎のしたに添えられ、ゆっくりと僕の顔があげられる。
それにしたがって目線が重なりより強く、激しく心臓が動く。
「やっと…会えたな。俺の魂の番。」
「…っ…」
その言葉になぜだか涙まで出てきて隠すために下に向きたかったけど顎を掴まれたままで向くことはできない。
テオバルド様は、獅子の獣人なのだろう。セサルさんよりも大きな体で鋭い目付きをしている。
僕の顎に添えられた手も僕の顔よりでかい気がする。
この方が僕の魂の番。
テオバルド様の顔が近づいてきて、唇と唇が触れた。
チュッと漏れた音に僕の何かがうずいてもっととねだるように彼の服を震える手で握り僕は背伸びをする。
彼が笑ったような気がしたが期待通りにまたキスをしてくれた。
満たされると言うのだろうか
湊のときとは違う胸が熱くなる感じがくすぐったい。
「やっと…俺のものになったな。」
啄むキスの合間にテオバルド様が僕の襟のボタンをはずし隠れていたΩバンドに指をかけていた。
それに気づいた僕一瞬にして現実に戻された。
(まって、…まって、そこは。)
魂の番なのだから…番になるのだから噛んで貰う覚悟はできている。
でも、いまはまだ、まってほしい
「まって。まって。お願いします。」
まって、あのあとが消えるまで
僕はまだ発情期になってない。
でも、湊は僕のうなじを噛む癖があった。
行為をしている際に良く噛んでいたため跡が残ってしまっている。
テオバルド様には知られたくない。
番もどきのことをしていた相手がいたことなんて知られたくない。
「…何を隠している?」
お、怒ってる?
でも、でも、
…………………………………………あれ?
僕、発情期来てないのにどうやってこの人と番になるの?
「あ、あの。僕、まだ一回も発情期来てないんです。」
…出来損ないのΩだと知ったら僕を捨てる?
知っていたら拾わなかった?
番になれない僕はやっぱりいらない?
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