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第9話 魂の番2

発情期… 今までは来ないことに安心を覚えていたのに。 「…そうか、まだ来てないんだったな。だが、」 僕の腰に回された腕は危機を感じても逃れることのできないほど強い。 もう、片方の手はそう言いながらもうなじの首輪から離れることはない。 首輪の接合部を探しているのだろうか。 首輪全体を指の腹で探るようにさわっている気がする。 密着した体はまだ熱い。 頭のなかは体と違って冷めていてこの状況をどうすればいいのかとか、彼がこのあと何を言うのかとか いたって冷静に物事を感じてる。 冷たく光目が怖い。 唇同士がくっつきそうな距離で彼は続ける 「だが、お前が俺の魂の番だ。俺に隠し事は許さない。」 一瞬グッと首が締まった。 そして、小さな物音をたてて何かが滑り落ちた。 「…っ………え?」 何が落ちたのかを見ようとして、腰にあった手も含め彼の手が耳と首と顎を囲うように持ち、顔をしたに向けることを阻止している。 「俺だけを見ろ。俺より先に目を反らすことはこれから先絶対に許さない。」 目線が絡むとまた体が熱くなって反らしたい気持ちになったが、体は動かなかった。 「…ぁれ?」 「αの力だ。俺らは服従させる力を持つ。させられたくなければ自分の意思で考えろ。」 支配、それがαの力。 組織の頂点に立つ力と言えば聞こえはいいが、 相手の体を思うように操ることができることである。 目でわかったことを伝え、そこでやっと彼の力から解放されたのがわかった。 それでも、彼の顔はまだ近い。 (…キスできそう) キスのできそうな距離。 クンクンと匂いを嗅いでるのか鼻が動いている。 「なんだ、この匂い。」 におい? なんのことだろう? 彼の鼻先が僕の首に当たった。 そのまま肩の方にいって急に体を回転させられた。 そして、うなじにかかる髪の毛を強い力で持ち上げられた。 「……一体これはなんだ。」 さっきよりも怒っている声。 怒鳴るような口調で僕のうなじをさわる。 (え?さわる?もしかして首輪がない?!) バッっとしたを向くと嫌な予感が当たる。 僕が動揺してるのをどう受け取ったのか分からないが急に腕を握られた。 「…いっ」 強い力で引っ張られていく。 部屋の扉を開け、乱暴に僕をどこかにつれていく。扉の外にいたセサルさんが驚いた目をしてテオバルド様を見ている。 テオバルド様と歩幅が違いすぎてつんのめりになりながらどこかに連れていかれる。 僕は、うなじを見られた焦りで何がなんだかわからなくなっていた。 どうしよう。見られてしまった。 これから何をされるの? もしかして、手つきの僕は捨てられる? いやだ。怖い。 怖くて、手を振り払おうとしても力がかなう相手ではなかった。 知らない部屋に連れてこられ大きな音を立てて閉めた扉に怖さが増した。 「その後は誰がつけた?」 誰って湊が… 「恋人か?」 恋人?あの関係はなんて言うのだろう。 「…」 何て言えばいい? 浮気された恋人です? 「目をそらすなといったが。」 怖い。怖い。 目を見てられない。 フェロモンから感じる怒り。 「答えろ」 体が動かない。 怖い 「こ…これは…みな…とが」 これは湊が 言うつもりではいるのにこわくて声がでない。 「そうか」 その一言をいって部屋の奥の扉を開けそこにあったベッドに僕を投げ飛ばす。 蔑んだ目。親と同じ目。クラスメイトとおんなじ目。 「俺の番は淫売だったらしい。」 眼光が誰もが恐れるだろうものだった

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