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第10話 魂の番3
Ωは穢れた存在。
なぜそう呼ばれるかは容易に想像がつくだろう。
発情期と言う理由で股を開き男を求める。
それがΩ。
αであろうが、βであろうが誰でも構わなくなってしまうのが発情期。ただ子種を求めてしまう。
テオバルド様は僕のうなじに爪を立て、湊がつけた噛み跡を消すように力を入れるようだった。
「お前は、まだ発情期が来てないと言った。なのになぜうなじに噛み跡がある。いつ、何族のαと接触した。返答次第では噛み跡の上から噛む。」
噛み跡の上から噛む。それは、Ωにとって死ぬと言うことと同じだ。番のΩは番ではない相手と番うことはできない。
僕のうなじについてる跡は湊ので、βの彼とは番うことはできない。
番とはΩとαのみの関係でしかない。
「…か、噛んでも大丈夫です。」
発情期を迎えてない僕は今、テオバルド様に噛まれても番にはなれない。
「死にたいってことか。」
「…っーー。」
爪に力が入り痛い。
でも、どこかで快感ににた燻りがあった。
僕は首を振る。
死にたいってことじゃなくて、
「か、か、噛まれても大丈夫なんです。」
焦ったように言う僕のことばが通じてないようだ。
「ぁ、遊びと言いますか、βの人が噛んだ跡が残ってるだけなんです」
最後に噛んだのはちょうど1ヶ月前のことだ。
みさきのことが気になり出した頃、湊に問いただしたことがある。
そのときに湊は誤魔化すように僕を抱いた。
Ωはうなじを噛まれると感じる。発情期中に噛むことで番うことができる。それの影響だろうと僕は思う。
血が出るほど噛み、僕が気絶した頃に湊はみさきのところに向かったのだと思う。翌朝、登校してくるみさきと湊は泊まったのだと分かるくらいの証拠がいくつもあった。
「αの獣人ではないんだな。」
「はぃ」
「そうか。それは、恋人だったのか?」
指先に入ってた力が抜かれた。うつ向せだった僕を抱き上げテオバルド様の膝の上で抱き抱えられた。
「恋人といいますか、元恋人といいますか、それともただの幼馴染みだったといいますか良くわかりません。」
簡潔に湊とことを話した。
「その子がβでよかった。」
そう言いテオバルド様は僕のうなじをさっきと近い撫でながらつづけた
「もし、その子がαの獣人であったら葉月は番にされていた。」
「僕は、まだ発情期が来ていません。だから、番うことは…」
18歳になってまだ来ない僕をみな出来損ないのΩとよんだ。
僕自身そうだと思わざる得ない。今だって、テオバルド様の番にならと思ってはいるが発情期が来ないとなれない。
「葉月は知らないのか。
αの獣人にはΩを発情させる力がある。
強制的に発情期に入らせるんだ。」
「…え」
そんなことができるのか。
なら僕は、テオバルド様が力を使ってくれれば番になれる?
「葉月を強制的に発情させ番にしたい。」
テオバルド様の唇がほほに落ちてきた。
テオバルド様も僕とおんなじことを思ってくれるの。
「葉月を一生を使って愛したい。」
魂の番とは、愛まで運命のように決まっているの。
テオバルド様ならΩなんて選り取りみどりなのに僕を愛したいといってくれる。
それも、運命が定めたことなの?
僕のこの番になりたいと言う気持ちも運命が定めたことなの?
僕の本当の気持ちじゃないの?
「このやり方は強制的に発情させるため、副作用がある。発情期後、何日間寝込むことになるかもしれないし、次の発情期が重くなるかもしれない。強制的にフェロモンで脳に刺激をするから何のリスクがあるかわからない。過去にこういった手を使って番った者がいないから未知なことだ。」
「はい…」
リスクが未知でも彼のものになりたいと思う気持ちも運命なの?
彼を、僕は運命じゃなくて僕自身で愛したい。
テオバルド様は運命。
僕を運命によって愛してくれる人を僕は愛したい。
「…お願いします。僕をテオバルド様の番にしてください。」
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