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第16話 先に逝く者と残される者2
翌朝、医師が来て検査をして妊娠を告げた。
そして、今後のことについて話すことになった。
「テオバルト様、葉月様おめでとうございます。確定ではありませんが、獣人様とのお子さまになられますので獣人様であると予想されます。」
「……。」
「獣人様であるため、大きな子が生まれますので母体に負担がかかると思われますので、こちらもしっかりと対応させていただきます。今のところ疑問などはありませんか?」
「母体への負担というのはどれくらいでしょうか?」
「Ω+である症例は少なく確証はありませんが、失礼ながらはっきり申し上げますと死期が近付く可能性がございます。とくに葉月様は強制発情をなさられているためいろんな負担が考えられます。」
「……そう、ですか。」
「こちらも、Ω研究委員会と連携して迅速な対応と適切なケアを行っていく所存です。何卒、ご贔屓に。」
医師をセサルさんに送らせテオバルト様は僕をきつく抱きしめる。
「何が、おめでとうございます。だ。ふざけるな」
小さな声で、怒りの満ちた台詞だった。
たぶん、僕の死期が近くなったことに怒っている。
あぁ、彼か好きだ。僕のことで怒ってくれることも、この腕のなかだって。
彼の匂いも好き。
匂いに過敏な僕を思って他の、セサルさんらの他人の匂いをつけないようにしてくれるところが好き。
寝るときに僕を囲むように尻尾を巻き付けてくれるのも好き。
キスするとき、回される大きな手が好き。
葉月と誰も呼ばなかった僕の名前を呼んでくれる声が好き。
テオバルト様が好き。
見つめられるとばれてしまうんじゃないかって思うほど照れてしまうけど、約束したから。眼をそらさないって。
だから、しっかりと眼を見るようになってテオバルト様の目が少しニコリと笑うところが好き。
いとおしい。
これは魂の番だから?
ううん。違う。これは僕の思い。だって、知ってからちゃんと好きになったんだもん。
ああ、本当に彼が好き。
僕はこれからどうなるんだろう。テオバルト様もどうなるんだろう。
あぁ、なんだか泣きそう。
こうやってずっと抱かれていたらすごく幸せなのに。
ずっと一緒にいられたらいいのにな。
テオバルト様はなにをおもっているんだろう。
子は生まなくていいといったらあの日から僕を見つめる目が寂しい。
僕が死ぬことを悲しんでくれているの?
自意識過剰なのかもしれない。でも、そんな風に僕を見てくるもんだから調子が狂う。
大丈夫。
大丈夫。
僕は、テオバルト様に会ってからすごく幸せなんだ。
心から求めた行為も、その後の余韻も、彼の腕のなかで得られる安心もすべて彼からもらった愛。
僕は、愛を知ることができたんだから。僕は……大丈夫。
テオバルト様のために、大切な人のために。
幸せを願おう。
それが僕にしか出来ないことならなおのこと……。
「テオバルト様。僕は、産むよ。テオバルト様がなんて言おうとしても。絶対に。」
「葉月……。俺は……」
息詰まる彼に僕は手を伸ばす。
首もとを少し引っ張り、体を屈めてもらい僕は彼にキスをする。
そして、儚く笑いこう告げる。
「僕は、幸せになりたいんだ。それと、幸せにしたいんだ。」
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