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第17話 先に逝く者と残される者3
「幸せになりたい……幸せにしたい?」
「うん」
僕の幸せな時間がテオバルト様にも感じてほしい。どれだけ、この関係になれたことが僕にとっての幸せかわかってくれるだろうか?
誰にも、必要とされなかった僕のことを必要だからと呼んでくれるのですら僕はすごく嬉しかったんだ。
一人じゃない。そう思えたことが僕にとっての最高級の幸せ。
今は、テオバルト様の血の入った子が僕のなかにいる。そう思うだけでも、顔が緩んでしかたがない。
死んでも、僕は悔いはない。
そう思えるほどだったんだ。
αは相方が死んだとしても次の相手を見つけることができる。
僕のことを忘れて幸せになる。辛いけど、悲しいけど、それがテオバルト様の幸せならそれはそれでいいのかもしれない。
雨が降る時はすごく体調が悪くベッドから起き上がることもままならないくらいだった。
あまりの辛さに死ぬのかもと何度も思っただ、やはりどこかで安心があった。
彼に捨てられるよりも、彼の心にあるうちにいなくなることができるのだと。
でも、体調がよくなってテオバルト様を見るとあまりにもひどい顔をしているから……
もし、本当に死んでしまったらテオバルト様はどんな顔をしてしまうのだろう。って安心した気持ちに傷をつけた。
腹の子の胎動を感じ何かこの子からも訴えがあるのか知れない。
死ぬかもと思うたんびに、僕はここにいる。そう激しく動いた。
テオバルト様とキスをして見つめあい、こういった。
「Ω+の前例者は子を産まずして56年と3日で息を引き取ったらしい」
と。
テオバルト様は子を産むことを、作ってしまったことをすごく後悔している。
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コンコン。
「テオバルト様がお呼びです。」
4ヶ月がたった。
お腹の子が、大きくなったのだと自覚できるほど腹部が膨れており存在をここに感じるようになった。
定期的に医師を呼び検査はするが順調に育っていくのにたいして、僕のことへの解決策は見つかっていない状態だった。
呼ばれていく先は、初めてここに来たときにテオバルト様と顔を会わした部屋だった。
「失礼します。葉月です。」
そう言って扉を開けると椅子に座るテオバルト様。
珍しく尾が揺れている。
「葉月!聞いてくれ。朗報だ。」
興奮した彼に誘導されるがまま椅子に座ったテオバルト様の膝の上に座った。
「先ほど、Ω研究委員会から連絡があってもしかしたら有効な治療法を見つけたかもしれないとのことだ。今こちらに向かってもらっている。」
腹の子に害のないような力でお腹に回された腕がギュッと僕を抱く。
「もしかしたら、いや、絶対に……!」
葉月を生かせ続けることができるのかも知れない。
例え、どんな手段でも。
切られた言葉からそう想像してしまうほどの興奮の仕方だった。
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