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第22話 好きだから4

「うっ……うえぇ」 気持ち悪い。頭がグルグル回る。それだけじゃなくて頭が痛くなってきて、なんだか吐きそう。 えづくだけで出ることはないが、薬が徐々に効いているのがわかる。気分もそれにあわせて急速に悪くなっている。 (でも、これが効ききれば僕のこのフェロモンを消すことができる。大丈夫。消えればテオバルト様に触れてもらえる。そばにいられる。 ……大丈夫。) はぁー。と息付くだけでも僕のからだから漏れるフェロモンの匂いがあって、徐々に薄くはなっているけど蒸せかえるほどである。 頭痛がひどくなってきて目を開けることすらできない。 「ッーーーー」 少しでも収まればと頭を抱え、猫のように体を丸くする。はぁはぁと小刻みに息をする。自分の残り香ですら気分が悪い。 これのせいでと思うと余計に悪くなった。 いたい。いたい。いぁたぃ (ぁ……ダメ。) 急に今までにない激痛が走って体が助けを求め近くのソファにすがるが、気が遠くなって床に倒れた。 (やっと、収めることができたのに……テオバルト様のそばに居たい。っ……) 溜まった涙が倒れると同時に赤い絨毯に落ち、消えた。 そばにいたい。離れたくない。触れてほしい。 僕の名前を呼んで。 大丈夫。僕は大丈夫。テオバルト様を一人にする方が怖い。 それでも、死ぬことは怖い。 ううん。死ぬこと怖い。 あぁ、やっぱりオメガなんて…… あれ?ここどこだろう。 白くて、なにもない。僕はなぜここにいるの?早く戻らないと。テオバルト様に会いたいのに! フォー。 なんの音?風? 風が音を運んでくる。 その音が確実に言葉を紡いでいく。 [Ω+は、世界の始まり。アダムとイブの禁断の果実。 果実は熟れた。誘う香を放ち、魅惑的な外見をし、相手を魅了する。 ≪あるもの≫には憧れを ≪あるもの≫には尊敬を ≪あるもの増えていった。≫には性欲を 与えることで果実は生った。 次第に、香が強くなって絶滅の危機になった。同時に、≪あるものが≫増えていった。そうして神は香がたつことに制限をつけた。3ヶ月に1週間。Ωの場合は、神の思い通りになった。 おさえて、おさえて溢れ出す。Ω+は、香の強いものであった故におさえられることで体に異常をきたすようになった。 そうして、神は嘆いた。 嘆いたゆえに、香も、外見もすべてを除いた存在を作った。それがβである。 そうして、神は憂いた。 憂いたゆえに、≪あるもの≫を孤高の存在とし香も、外見もすべてをΩ、Ω+と惹かれ合うようにした。それがαである。] これは、バースの成り立ち? ならぼくは……もしかして、抑えるよりも出した方が生きることができる? でも、……だって、……そうしたら。 そうしたら、テオバルト様と一緒にいられない。 一緒にいられないなら僕はいきる必要なんてない。 この事は絶対にテオバルト様に言ってはいけない。 あぁ、また隠し事ができてしまう。

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