3 / 13

第2話

そもそも俺は不良という類が大嫌いだった。 あの日、先輩に会うまでは。 **** ザーッと雨が降っていて辺りも薄暗い、そんな天気の日。学校が終わって帰宅途中、近道の公園を通った時。 「ギャハハハ!キタネェ!」 「うわっ!近づけるな!汚れる!」 「コイツ、まだ俺らに威嚇してるぜ?」 「フヴーッ!」 馬鹿笑いに混じって、唸る声がきこえた。 「なんだ?」 何をしているのか確かめようと声のする方へ小走りで向かい、その光景を見て絶句した。 「あっはは!そんな威嚇、怖くもなんともねぇ!!」 なぜなら、小柄な猫が不良三人に囲まれ、まるでオモチャのようにされていたから。 「躾がなってねぇ悪い猫には、厳しく…な?」 威嚇で牙を剥く子猫に対して、大きく拳を振り上げる不良の一人。 その瞬間、頭で考えるより先に体が動いた。 「オーラ、ヨッと!!」 「ぐあっ!!」 「…あ?」 その拳は子猫ではなく俺の顔面に当たり、ひ弱な俺は、簡単に吹っ飛ばされる。 「あー?誰だお前。」 なにこれ、痛い。 「なに猫の躾の邪魔してくれてんの?」 焼けるように痛い。 「…お前も、躾されてぇのか?あ?」 「い…っ、痛いだろうが!このクソ野郎!!」 喧嘩とは無縁だった俺にとって、今まで受けたことのない痛み。余りの痛さに涙をぼろぼろ流しながら思わず叫んだ。 当然のように不良たちの目は変わる。 「んだと?」 その中で、リーダー的な人が一歩、また一歩と俺に近づいて来る。 「これは…っ、躾じゃねぇ!虐待だっ!!もう、やめ…っぐはぁ!!」 負けじと言い返した途端、再び容赦ない一撃が飛んできて、ガードも間に合わなかった俺は、バシャァ!と水たまりに倒れ込んで、ピクピクと痙攣する。 あぁ、これだから不良は嫌いなんだ。 弱いものいじめするし、喧嘩っ早いし、理不尽でバカで無能で……。 そんな相手に負ける俺は、それ以下の人間なのかもしれない…けど…。 「だれ、か…ネ、コ…ッ」 目の前にある、守るべきものを…足掻いてでも守りたかった。 「…そこ、邪魔なんだけど。」 そんな声が最後に聞こえて、俺は意識を失った。

ともだちにシェアしよう!