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第3話

「…んっ…?」 どれくらい時間が経ったのだろう。 「…いっ、つ……ん!?」 顔の痛みで徐々に意識が覚醒し始め、見知らぬ天井が視界に入り、ガバッと起き上がった。 「…あれっ?ここ…どこ?」 きょろっと辺りを見渡すと、見覚えのない部屋にいて、俺どうしたんだっけ…と、自分の記憶を辿る。 「たしか……、あっ!猫!」 少し考え込んでから、公園での出来事を思い出した。 「…気がついたか。」 「えっ!?」 不意に部屋の扉が開き、声をかけられる。 その声に、俺は聞き覚えがあった。 「具合は?」 『そこ、邪魔なんだけど。』 「一致!!」 そうか、この人が!! 「おい、聞いて…」 「俺なんかより、猫は!?猫はどうなったんですか!?」 「…無事だよ。お前が庇って殴られたお陰でな。」 「あ…、よ、よかったぁ…!」 ホッと息を吐いて、いつの間にかベッド脇まで来てた彼を見上げる。赤髪で、目つきが鋭い。 かっこいいけど、この人も不良なんだろうなと思った。 「あのっ、本当にありが…っ?」 俺からしたらピンチの時に助けてくれた、言わばヒーローのような彼に、お礼を言おうと口を開いた時、彼の手が殴られて腫れた俺の頬に触れた。 「…弱ェくせに度胸あんのな。でも、あんまり無茶はするなよ。それと、あの猫はお前が助けたんだ、だから礼はいらねぇ。」 鋭くも優しげな瞳が、しっかりと俺を捉える。 触れられてる場所から、彼の熱が俺に移されているかのように、頬が熱くなった。 「支度したら勝手に帰れ。」 そう言って俺の返事も聞かず、さっさと背を向けて部屋を出て行く。 残された俺は、触れられた頬を赤くしながら異常なほど高鳴っている胸に手を当てて、しばらく動けなかった。 「…ナニアレ、超かっこいい…。」 その日から俺はこの人に夢中なのだ。 不良でも、中には心の優しい人もいるのだと知ったから。

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