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第4話
それから、彼が同じ学校の「タイガー」だということを知った。
「ねーねー、先輩!これからどこ行くんですかー?」
「………。」
「あっ、そういえば映画のチケットもらったんですけど!!一緒に行きません!?」
「………。」
「俺アクション大好きなんですけど、先輩はどんなの好きです?」
「………。」
「あ!アイスクリーム屋さん!ね、先輩、寄って行きません?俺、シュワシュワしたやつ好きなんですよ!奢ります!!」
「………。」
ひたすら話しかける俺と、ひさすら無視する先輩。まともに話をしたのは助けてくれた日以来で、ずっとこんな感じだ。
けど、全然それで構わない。だって先輩を独り占めできるから。周りには俺しかいないし、友達なんて見たことない。
だから、俺は安心していた。
「清春?」
「え…?」
不意に背後から先輩を呼ぶ声が聞こえ、振り向くと長身で絵に描いたようなイケメンが、片手を上げて俺たちに近付いて来る。
「…あ?…あぁ、晶か。」
「なぬっ!?」
先輩が喋った…だと…!?
「…ん?友達?珍しいね。」
普段、うんともすんとも言わない先輩が険しい顔一つせず誰かと話す姿に俺は驚愕し、晶と呼ばれた男はそんな俺を見て少し目を見開いた。
「ちげーよ、鬱陶しい馬鹿犬。」
「ブッブー!!どっちも違いまーす!正解は、友達以上恋人未満の後輩でした〜!」
普通に話す先輩を見て、なんだか悔しくなり俺も口を開く。
「…ふはっ!え、なにこの子、超面白い。なに?恋人未満って?」
「こいつホモ。勝手に言ってるだけだ。うるさいし、晶にやるよ。」
「いや、いらないけど。…ふふ、そっかぁ。」
「いいえ!俺は大河先輩が好きなだけで、男が好きなんじゃありませんから!」
そう言って先輩の腕にしがみ付くが、直ぐに振り払われた。
「へぇ、本当に珍しい子だね。清春は怖すぎて誰も近寄らないし…もうこの子しにとけば?」
「馬鹿言うな。俺はホモじゃねぇ。」
「これからなればいいじゃん。見るところ、相当惚れてるし?きっと全力で尽くすいい嫁になるよ!」
「はい!全力で尽くします!ボク、いい嫁になります!オススメです!」
先程までは、得体の知れない人物だった晶さんに嫉妬していたが、俺の気持ちを知るや否や応援してくれる姿勢に、俺は速攻で心を開く。
「…はぁ、くだらねぇ。じゃあな。」
「あっ、ちょっと待っ…わっ!?」
そんな俺たちに呆れた先輩を慌てて追いかけようとした時、晶さんに腕を掴まれて、少し体が傾いた。
驚きながら振り向くと、そこにはふわりと微笑む晶さんの姿。
「ワンコくん、またね。」
「?...はい!では!」
犬じゃねぇけどな!なんて思いながら晶さんと挨拶を交わし、俺は走る。
…晶さんの言葉の意味を知るのは、もう少し先の事だった。
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