6 / 13

第5話

「先輩っ!先輩!待って…っ!」 「…ついてくんな。」 「せんぱ…っ、歩くの速いッスねっ!」 運動が苦手な俺は、少し走っただけで息を切らす。どんだけ体力ねぇんだ、俺...と、同じ男として少し情けなくなった。 「はぁっ、やっと追いついたぁ…。」 「………。」 「先輩、これからどこ行くんですか?」 実は結構気になってたりして…。 「………。」 まぁ、答えてくれないのは想定内だけど! 歩いて行く道は、少しずつ人気が少なくなっていき、どこに向かうんだろうと若干不安になりつつも、先輩について行った。 「…先輩…。」 「………。」 そして数分後、目の前の光景に目が点になる。 「意外にロマンチスト…?なんですね…?」 「黙れ。」 「や、俺的に雰囲気もあって最高のシチュエーションですけど!!」 「黙れ。」 そこには、サーッと風が流れる誰もいない砂浜と、夕日が水面をキラキラ光らす海があった。 「喧嘩した後に海…、よく来るんですか?」 「……たまに。」 「そっか!風が気持ちいいですね!」 「...........。」 珍しく質問に素直に答えた先輩の表情が、少しだけ柔らかい。 先輩の隣に座って、一緒に海を眺める。 「先輩、海キラキラしてますね!」 「………。」 「俺、久しぶりに海見た気がする。落ち着きますね。」 夕日で光る海は、綺麗だけど少し切なくなる。 確かこういうの、センチメンタルっていうんだっけ。 「…お前は、なんで俺につきまとう?」 「え…?」 急に質問され、思わず横にいる先輩を見た。 「一緒にいたって楽しくないだろ。それにお前は俺の何を知って、そんなに好きって言えんだよ。」 俺が先輩を見ても、先輩は俺を見ない。 ただずっと海を見てるだけ…。それが酷く寂しい気持ちにさせた。 ねぇ、その瞳に俺を映して…。 「…俺は、不良なんて嫌いだった。それは今でも変わらないけど…、先輩が教えてくれた。先輩みたいに優しい不良もいるってこと。 だから好きになって、もっと知りたいと思う。嫌いな不良なのに、先輩を見るといつも…。」 そこまで言いかけて、油断していた先輩の顔を少し強引に、俺の方へ向ける。 「…なっ!」 大きな抵抗もなく、簡単に交わった視線に熱が帯びる。 「好きって気持ちが溢れてくるんです。」 「は……、」 この熱が、先輩にも伝わればいいと思った。 「好きなんですよ、大河先輩。だから、俺を好きになって……。」

ともだちにシェアしよう!