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第5話
「先輩っ!先輩!待って…っ!」
「…ついてくんな。」
「せんぱ…っ、歩くの速いッスねっ!」
運動が苦手な俺は、少し走っただけで息を切らす。どんだけ体力ねぇんだ、俺...と、同じ男として少し情けなくなった。
「はぁっ、やっと追いついたぁ…。」
「………。」
「先輩、これからどこ行くんですか?」
実は結構気になってたりして…。
「………。」
まぁ、答えてくれないのは想定内だけど!
歩いて行く道は、少しずつ人気が少なくなっていき、どこに向かうんだろうと若干不安になりつつも、先輩について行った。
「…先輩…。」
「………。」
そして数分後、目の前の光景に目が点になる。
「意外にロマンチスト…?なんですね…?」
「黙れ。」
「や、俺的に雰囲気もあって最高のシチュエーションですけど!!」
「黙れ。」
そこには、サーッと風が流れる誰もいない砂浜と、夕日が水面をキラキラ光らす海があった。
「喧嘩した後に海…、よく来るんですか?」
「……たまに。」
「そっか!風が気持ちいいですね!」
「...........。」
珍しく質問に素直に答えた先輩の表情が、少しだけ柔らかい。
先輩の隣に座って、一緒に海を眺める。
「先輩、海キラキラしてますね!」
「………。」
「俺、久しぶりに海見た気がする。落ち着きますね。」
夕日で光る海は、綺麗だけど少し切なくなる。
確かこういうの、センチメンタルっていうんだっけ。
「…お前は、なんで俺につきまとう?」
「え…?」
急に質問され、思わず横にいる先輩を見た。
「一緒にいたって楽しくないだろ。それにお前は俺の何を知って、そんなに好きって言えんだよ。」
俺が先輩を見ても、先輩は俺を見ない。
ただずっと海を見てるだけ…。それが酷く寂しい気持ちにさせた。
ねぇ、その瞳に俺を映して…。
「…俺は、不良なんて嫌いだった。それは今でも変わらないけど…、先輩が教えてくれた。先輩みたいに優しい不良もいるってこと。
だから好きになって、もっと知りたいと思う。嫌いな不良なのに、先輩を見るといつも…。」
そこまで言いかけて、油断していた先輩の顔を少し強引に、俺の方へ向ける。
「…なっ!」
大きな抵抗もなく、簡単に交わった視線に熱が帯びる。
「好きって気持ちが溢れてくるんです。」
「は……、」
この熱が、先輩にも伝わればいいと思った。
「好きなんですよ、大河先輩。だから、俺を好きになって……。」
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