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第8話

「…うっ……い、ってぇ…。」 目を覚ますと、ズキッと後頭部が痛んだ。 そして自分が床に倒れていることに気が付く。 「な、何が起きて…」 「あ、起きた?」 「あ…っ!?ア、アンタ、さっきの!」 しゃがんで俺の顔を覗き込むのは、先ほど俺に先輩からの伝言を教えてくれた人だった。 そして彼の周りには、不良の類に入る数人の男たちがいて…。 「え、なに……、ま、まさか…っ!」 「んー?やっと騙されたことに気がついた?ハハハッ!」 「…っ、」 「誰も近寄らない、誰とも関わらない、あの大河が!俺に!伝言ー!?…アッハハハ!そんな事、あるわけねぇだろ!」 馬鹿にしたような顔で俺を見る。 …やられた。たしかにそれは少し考えたらわかる事…。 この状況は完全に油断しきっていた俺が招いた結果だった。 「俺を、どうする気だ…。」 「んなもん、決まってんだろ?大河を誘き寄せるエサだ。」 「やめろ!俺なんかで先輩は来ない。」 「さぁ?それはどうかな?」 「は…?」 彼が含みのある笑みを浮かべた時、廊下からバタバタと足音が聞こえ、扉が勢いよく開いた。 「木村さん!大河が来ました!」 「な…っ!」 「…ふっ、話がわかるやつで助かるわぁ。」 先輩が来たという知らせに、木村と呼ばれた男は細く微笑むと、スッと立ち上がる。 そして、入り口にいる先輩を見た。 「…よぉ、大河。」 「つまんねぇ事してんじゃねぇよ。」 「ハッ、相変わらずスカしたツラして腹立つ野郎だなぁ?」 「…そいつを返して貰おうか?」 「せ、んぱ…い…。」 先輩が俺を助けに来てくれた。 それだけで、涙が出そうになった。 けど、この状況では圧倒的に俺たちが不利で…。 「タダで返すわけねぇだろ?お前にはたくさん借りがあるからなァ?」 「わかったから、そいつには手を出すな。」 「なんで…、先輩…っ、」 俺なんかのために、先輩が傷つくことが一番嫌だ。 手を固く握り締め、いつまでも地面に這いつくばってた体を起こした。

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