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第11話

「…あのー、お取込み中悪いんだけどさぁ〜、もう入っていい?」 先輩との両思いの余韻に、浸る事もさせないかの如く聞こえた声。 「えっ!?」 「…もう入ってんだろうが。」 突然の事で驚きながら声のする方を見て、思わず目を見開いた。 だって、腕を組んで壁にもたれかかっていたのは…。 「ワンコくんの包帯、取り替えに来たんだけど。」 「なっ、なんで、晶さんが…っ!?」 前に、先輩と親しげに話していた晶さんだったから。 「……はぁ。」 「いやー、ついに清春がホモなったんだね!よかったね、ワンコくん!おめでとう!」 「えっ、えっ!?なんで、ここに…!?」 呆れる先輩を他所に、爽やかな笑顔で祝福してくれる晶さんだったが、今はそれどころじゃない俺。 「ん?なんでって、ここ俺んちでもあるから?俺、清春のオニーチャンしてます、大河晶でーす!」 「は?」 両人差し指を自分の頬に当て、おちゃらける晶さんから、キャピッ☆という効果音が聞こえそうだった。 「…キモい言い方すんな。」 「はぁぁ!?お兄ちゃん!?先輩の!?」 「だから前に、またねって言ったじゃん。」 いや、確かに言われましたけど!! そんな、兄弟だなんて…わかるかぁ!! 「…どうでもいいことグダグダ言ってんな。早く包帯変えろ。」 「はーいはい。相変わらず口悪いねぇ。」 自分が不器用だからって俺にやらせてるくせに酷くない?なんてグチグチ文句言いながら、晶さんは手早く包帯を取り替えてくれた。 「あっ、ありがとう、ございます…。」 「いいえー。じゃ、ごゆっくり~。」 お礼を言うと、ヒラヒラと手を振って部屋を出て行き、パタンと扉が閉まる。 そういえば前に殴られた時の怪我の手当ても、晶さんがしてくれたのかな〜なんて、ぼんやり思っていると、ふと思い出した。 「…ねぇ、先輩。」 「…なんだ。」 「俺が殴られた直後に先輩、俺のこと…"純"って呼びました?…よね?」 「………。」 何も言わず目を背けた先輩を俺は肯定と捉え、一気に口元が緩む。 「ですよね!呼びましたよね!!あの〜、もう一回呼んでくれません?」 「やだ。」 「即答!?…じゃ、じゃあさ…俺が、き、清春さんって呼んでもいい?」 名前呼びなんて恐れ多くて出来なかったけど、どさくさに紛れて聞いてみた。"清春さん"って口にするだけで緊張して、ドキドキする。 「好きにしろ。」 「え!本当!?やった!!」 「もういいだろ、お前は頭怪我してんだ。少し休め。寝ろ。」 先輩は、喜ぶ俺の額を指で軽くツンと当て、横になるよう催促する。 「えー、別に平気なのに…。」 なんていいながらも、俺を気にかけてくれる先輩の優しさが嬉しくて大人しく横になった。 「…ね、き、清春さん、手繋いで寝ていい?」 「………。」 その優しさにつけ込むかのように、図々しく手を差し出してみると、先輩は何も言わずにきゅっと握ってくれた。 「うへへっ、おやすみなさいっ!」 先輩の手をぎゅっと握り返して、俺は深い眠りについた。 「……おやすみ、純。」 「ほら、ここで軽くチュッ♡と…。」 「しねーよ。つか、覗いてんなよ変態兄貴。」 「残念!」 -FIN-

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