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ヒートの話

「う…うぅ……は…あ…」 熱く燃える様な体の熱。 ドクドクと音を立てて苦しい程に早まる心臓。 これは……まさか本当にヒート? 「はっ…はっ…はっ……」 何もしていないのに息が上がる。 体が沈み込む様に重くだるい。 体の芯が疼き……触れる草木にまで体がビクビクと反応する。 想像はしていた。 ヒートを迎えたオメガも娼館で見た事があった。 男を求め甘い声で鳴いていて……お店の人に『稼ぎ時』だと、首輪をして沢山のお客さんを相手させられていた。 見ていたのと実際は違った。 こんなに……辛い。 ハンソンさんが注告してくれていた通りだった。 疼きと熱が脳を焼き切っていく……。 誰でも良い……誰でも良いから僕を犯して。 暗い森の中、通りかかる人間なんていない。 誰か助けて……。 このまま死んでしまうんじゃないかと思うほど体に熱が籠っている。 「フーッ……フーッ……」 森の奥から荒い息づかいが聞こえて来た。 徐々に大きくなっていく。 助けて……。 ガサガサと草木をかき分け近づく音のする方へ体を向けた。 茂みを踏みつけ現れたその姿は……。 「ブオオオオオオォォォンッ!!」 ボタボタと涎をたらしながら近付いてくる化け物は猪の様な顔に猿の様な毛むくじゃらの体。 これが……魔獣。 初めて見た醜い魔獣の姿に体が震えた。 このままでは喰われる……這いずりながら逃げようとした僕の足を魔獣が掴み、引きずられた。 「ひっ……!!」 振り返った魔獣の股間には、人の腕程もある凶悪なモノがいきり立っていた。 人のモノとは全く異なる禍々しい物体がビクンビクンと興奮したように動いている。 オメガのヒートは魔獣も引き寄せるのか? このままじゃ…魔獣に犯られる……。 頭では恐怖を感じているはずなのに……。 ……欲しい。 魔獣でも化け物でも何でも良い。 早く中に挿入れて、突いて、このうずきを鎮めて欲しい。 体は犯される事を期待して、ますます熱を持った。 なんて浅ましい体。 ハンソンさんに偉そうにあんなことを言っておいて、結局ヒートに抗えない。 人とは比べ物にならない強い力で地面へと押し倒されて背後から魔獣がぺニスを押し付けて来るが、服が邪魔をして入らない。 「フゴオオオンッ!!!」 魔獣は怒った様に一鳴きして僕の服をバラバラに切り裂き、両手で僕の体を掴み上げた。 いきり立つ自身のモノへと僕の体を勢い良く押しつけ……。 魔獣のモノに貫かれるはずだった僕の体は誰かの腕に抱き止められていた。 目の前では首をはねられた魔獣の体から血が吹き出して……ヨロヨロと後ろへ二、三歩進んで派手な音を立てて倒れた。 この腕は誰? ハンソンさん……? 僕を助けてくれる人なんて他に思い浮かばず、その体に腕を回した。 「ハ……ソンさ……抱……て」 キスをせがむ様に体を伸ばすと 「ちっ、面倒だな……ヒートのオメガか……」 期待した人物ではない、聞き覚えの無い声にゆるゆると目を開き顔を見ると、見たこと無いぐらい力強い光を放つ男……口許に牙が光っている……アルファだ。 番にされてしまう……逃げ出したいのに体を離す事が出来ない。 アルファの匂いが脳を刺激して……欲しい。 堪えられずアルファの体に自分の腰を擦り寄せた。 「触るな……」 冷たい声と共に乱暴に地面に転がされ、後ろから頭を押さえつけられた。 「お前が誰の物かは知らないが、俺に情欲を押し付けた自分の気持ちの弱さを呪えよ……」 かろうじて首に残っていた服の残骸をむしり取られ、首筋を露にされた。 「ま……待って……番は…嫌…」 逃げ出そうとして手でもがくがアルファの力は強く、逃げ出すどころか身じろぎも出来ない……アルファの牙が近づいて来る。 ずっと拳の中にあるホタル石を力一杯握りしめた。 助けて……ハンソンさん!! 「いやっ!!やぁっ!!いやだあぁぁぁっ!!!!」 首筋に鋭い痛みが走る。 ヒート中に噛まれた……。 こんな見ず知らずのアルファに……番にされてしまった。 体から全ての力が抜けて、絶望だけが体を占めた。 意思に関係なく涙が流れ続ける。 ガサガサと茂みが揺れて……。 「セルジュッ!!」 ……ハンソンさん。 見られた……。 番なんて居なくてもヒートを乗り越えてみせると啖呵をきったのに……魔獣に犯されかけ、見ず知らずのアルファにみっともなく転がされて首筋を噛まれた愚かなオメガの姿。 「見ないで……」 それだけ言うのがやっとだった……噛みつかれた首筋からスッと血の気が失せていく……頭が冷えきって……意識が薄れていった。

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