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内線で主人から一言『来い』と呼ばれたナギは、ヒヨリの首についた歯型を見せられてあんぐりと口を開けて固まった。 しばらくの間痛いほどの沈黙が続いたが、やがて言葉を取り戻したナギが突然叫んだ。 「頸を、噛んだ!?どういう事です!?」 「…言葉の通りだ」 驚愕と怒りでいつもの冷静さを失ったナギがアドルフに詰め寄る。 彼のベッドには我関せずといったように穏やかな顔で深く眠るヒヨリ。そんな彼を気遣う事もせず、ナギの声はどんどん大きくなっていく。 「全く説明になっていません!噛んだ?人間のオメガを?それって、それって!」 「番、だな」 「ああ、言葉にしないで下さい!人間と番うなんて…分からない…何でそんな事に」 「俺だって望んでそうした訳じゃない」 感情的になるナギとは違い、アドルフは至って冷静だ。静かで、淡々としている。 「この事は絶対に外部に漏らすな。お前だけに留めておけ」 「当たり前です!世間に知られたらテイラー家は終わりです!叔父様が何というかっ!このオメガももう外には出せません!」 流石にうるさかったのか、ううん、と眉を寄せたヒヨリを見てナギが口を噤んだ。 その目は冷たい。 「とにかくアドルフ様は毛が抜け禿げるまで猛省して下さい」 怒りを露わに部屋を出ていくナギの背中をしばらく追いかけた後、アドルフは深い溜息を吐いた。

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