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群の長
そのまま、森を奥へ奥へさらに1時間ほど進んだ頃、不意にひらけた場所に着いた。
奥に大きな岩場があり、山になっている。
「少し待っていろ」
獣人ラウは、岩場へ駆け上り、一番上で天を仰ぐ。
そして…
オォーーーン!!
息を大きく吸い込み、あたり一帯に響き渡る遠吠えを行う。
心の芯から震えるような低音から、射抜かれるような高音へ変化する透き通った声。
月夜に映えるその凛然とした姿、現実世界とは思えなくなるような美しい情景だ。
四方から返事をするように鳴き声が返ってきている。
そのうち、あちらこちらから走り来る足音が無数に聞こえてきた。
姿を見せたのは、ラウと同じような見た目の、ラウよりは小柄だがみな180㎝以上は身長がありそうな獣人たち。
ラウの遠吠えに集まって来たようだ。その数二十以上。
「皆に知らせがある、今よりこの二名が我が群 の仲間に加わる、この二名はラウ、クロフォースの管理下にある、無用な争い事は慎むように」
ラウに指され、皆が一斉にこちらを見る。
沢山の獣の目が向けられ、身体が硬直するような恐怖を感じる。
「周知!」
ラウが力強く声を出すと…
「はい!」
再びラウを見上げ、声を揃えて返事をする獣人達、なんとも壮観だ。
「ご苦労、解散!」
ラウが声を上げると、集まっていた獣人の一人が大きく遠吠えをする。
すると、集まっていた獣人達が一斉に散っていく。
この一連の出来事だけで、ラウがどれほどの地位にいるのかが分かった。
「待たせたな」
ゴツゴツした岩場を素早く駆け下りてくるラウ、運動能力も人間とは桁違いだ。
「…ラウって実は物凄く偉いのか…」
圧巻に思い呟いてしまう。
「そうでもない、森は広い、この辺を縄張りにする獣人族の一番にいるだけだ」
いや、充分すごいだろう。
「オレ、馴れ馴れしくし過ぎてるのか」
「いや、できれば、お前はそのままでいてくれ…」
そう答えたラウの瞳はどこか寂しげで…虚空を見つめていた。
「えっ」
「兄様、おかえりなさいませ、ご無事で何よりです」
不意に横から、綺麗な真っ白の毛並みの獣人が、頭を低くしラウに近づいてくる。
他の獣人よりかなり小柄だ。
ラウのことを兄と言っているから関係性は兄弟なんだろう。
「あぁ」
しかしラウはかなり素っ気ない。弟の方を見ようともしない。
「食事にしましょう」
気にする様子もなく、微笑むように促す。
「この二人にも用意してくれ」
「…はい」
ラウの弟であろう獣人は、チラリとこちらに野生的な瞳を向ける。
一瞬、ギラリと睨みつけられたように感じた。
「もう下がれ」
「はい、後ほど…」
そう頭を項垂れ答えると、素早く走り去っていった。
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