15 / 28
距離感
翌日はラウと狩りには行かず、シィの安全を考え、側を離れないようにした。
その間、食べ物を運んでくれたのはラウだった。今回のこと、責任を感じているようだけど…ラウは何の得もないのに人間のオレ達を助けてくれたし、充分良くしてくれている。
オレ達のせいで、ラウに迷惑をかけることになるのは良くないから…
自分たちで解決しないといけない。
不意に音もなく、オレとシィの寝床に侵入してきた人物。
綺麗な白い毛の…
「何か用か?レイ」
冷静に声をかける。
シィは身体を縮め震えていた。
「ッ、ふ、今日は狩に行かなかったのか?」
オレの姿を見て少し苛立つ様子を見せるレイだったが、鼻で笑いながら話しかけてくる。
「シィが怪我をしているからな…」
「……」
「オレたちが邪魔か?」
「当たり前だ!お前は何様なんだ!兄様に物を取りに行かせるなんて、いい加減にしろよ!」
その言葉にカッとなり反応を返すレイ。
「…そうだな、お前達の長 に無礼なことをした、悪かったよ」
「ッ兄様の側から離れろ!兄様のそばにいていいのは僕だけだ」
「…レイ、お前はどうしてほしいんだよ」
レイの仕業なら、レイの気持ちを正してやらなくちゃならないから。
「気安く呼ぶな!兄様にも様をつけろ、敬え!!」
さらに背中の毛を逆立てて怒り続ける。
「それをしたらオレたちはこの群 にいてもいいのか?」
「お前らなんか出て行け!」
興奮したまま聞く耳を持たないレイに…
「出ていきたくないんだ!この群 が好きだから!」
はっきりとした声で伝える。
「ッ、」
やや怯むレイ。
「どうすれば出て行かなくて済む?教えてくれよ」
「この小屋を離れろ、兄様に近づくな」
「分かった、今日でラウ様の住処を去る。ラウ様には近づかない、無礼なことも慎む。それでお前はオレたちに危害をくわえないんだな」
「……あぁ」
睨みつけたまま、短く頷いた。
「約束だぞ」
そう念を押すが、レイは身体を翻し小屋を出て行った。
夕方になり狩から戻ったラウが下から声をかけてくれる。
「アサト、飯はどうする?シィは動けるようになったか?」
声の後、すぐ姿が見える。
「おかえりなさい、ラウ様」
帰ってきたラウに丁寧に話しかけてみる。
「は?」
突然の様付けに戸惑っている様子。目を丸くして言葉を失う。
「少し話があるんですけどいいですか?」
「な、何を今更、そんなよそよそしい話し方、いつも通りにしてくれ」
「今日、レイと話して…レイの望みはラウ様を敬うこと、オレは群 の長 であるラウ様に馴れ馴れしくし過ぎました、申し訳ありません」
「レイが何を?俺がいいと言っているんだ」
「いえ、あと、ラウ様の住処に長居しすぎたので、今日までで出ようと思います、あ、でも群 にはおいていただきたいので、村の外れでいいんで住処を分けていただけないでしょうか」
自分でも敬語で話すことに違和感を抱えつつ、レイとの約束を守るために使い続ける。今後人前では敬語を使わなくてはならないから。
「やめろアサト、そんな話し方、それに出て行かなくていい、レイには俺が話す」
「話したとしてもレイは納得しない、だからレイには何も言わないでください。またシィに危険が及んだら嫌ですから」
「アサト、」
「オレは今まで通り狩にも参加したいですし、この群 の一員として認めてもらいたいんですよ」
「……」
突然のよそよそしい態度に、ラウはかなり混乱しているようで言葉が出なくなる。
「だから、レイのいう通りにします。確かに群 の長 に対して無礼な振る舞いをしていましたし」
「そんなことはない!」
「…住処が余っていなければ造り方を教えてください、自力で造ります。今まで、手厚く保護してくださってありがとうございました」
「駄目だ、俺の保護下から外れたら、お前たちが何をされるか分からない、お前たちに反感を持っているのはレイだけじゃないんだ、…俺はまだ群 を全て統率出来ていない…」
なんとか引き止めようと言葉をつなぐラウ、明らかに動揺している。
ともだちにシェアしよう!