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距離感

翌日はラウと狩りには行かず、シィの安全を考え、側を離れないようにした。 その間、食べ物を運んでくれたのはラウだった。今回のこと、責任を感じているようだけど…ラウは何の得もないのに人間のオレ達を助けてくれたし、充分良くしてくれている。 オレ達のせいで、ラウに迷惑をかけることになるのは良くないから… 自分たちで解決しないといけない。 不意に音もなく、オレとシィの寝床に侵入してきた人物。 綺麗な白い毛の… 「何か用か?レイ」 冷静に声をかける。 シィは身体を縮め震えていた。 「ッ、ふ、今日は狩に行かなかったのか?」 オレの姿を見て少し苛立つ様子を見せるレイだったが、鼻で笑いながら話しかけてくる。 「シィが怪我をしているからな…」 「……」 「オレたちが邪魔か?」 「当たり前だ!お前は何様なんだ!兄様に物を取りに行かせるなんて、いい加減にしろよ!」 その言葉にカッとなり反応を返すレイ。 「…そうだな、お前達の(おさ)に無礼なことをした、悪かったよ」 「ッ兄様の側から離れろ!兄様のそばにいていいのは僕だけだ」 「…レイ、お前はどうしてほしいんだよ」 レイの仕業なら、レイの気持ちを正してやらなくちゃならないから。 「気安く呼ぶな!兄様にも様をつけろ、敬え!!」 さらに背中の毛を逆立てて怒り続ける。 「それをしたらオレたちはこの(むれ)にいてもいいのか?」 「お前らなんか出て行け!」 興奮したまま聞く耳を持たないレイに… 「出ていきたくないんだ!この(むれ)が好きだから!」 はっきりとした声で伝える。 「ッ、」 やや怯むレイ。 「どうすれば出て行かなくて済む?教えてくれよ」 「この小屋を離れろ、兄様に近づくな」 「分かった、今日でラウ様の住処を去る。ラウ様には近づかない、無礼なことも慎む。それでお前はオレたちに危害をくわえないんだな」 「……あぁ」 睨みつけたまま、短く頷いた。 「約束だぞ」 そう念を押すが、レイは身体を翻し小屋を出て行った。 夕方になり狩から戻ったラウが下から声をかけてくれる。 「アサト、飯はどうする?シィは動けるようになったか?」 声の後、すぐ姿が見える。 「おかえりなさい、ラウ様」 帰ってきたラウに丁寧に話しかけてみる。 「は?」 突然の様付けに戸惑っている様子。目を丸くして言葉を失う。 「少し話があるんですけどいいですか?」 「な、何を今更、そんなよそよそしい話し方、いつも通りにしてくれ」 「今日、レイと話して…レイの望みはラウ様を敬うこと、オレは(むれ)(おさ)であるラウ様に馴れ馴れしくし過ぎました、申し訳ありません」 「レイが何を?俺がいいと言っているんだ」 「いえ、あと、ラウ様の住処に長居しすぎたので、今日までで出ようと思います、あ、でも(むれ)にはおいていただきたいので、村の外れでいいんで住処を分けていただけないでしょうか」 自分でも敬語で話すことに違和感を抱えつつ、レイとの約束を守るために使い続ける。今後人前では敬語を使わなくてはならないから。 「やめろアサト、そんな話し方、それに出て行かなくていい、レイには俺が話す」 「話したとしてもレイは納得しない、だからレイには何も言わないでください。またシィに危険が及んだら嫌ですから」 「アサト、」 「オレは今まで通り狩にも参加したいですし、この(むれ)の一員として認めてもらいたいんですよ」 「……」 突然のよそよそしい態度に、ラウはかなり混乱しているようで言葉が出なくなる。 「だから、レイのいう通りにします。確かに(むれ)(おさ)に対して無礼な振る舞いをしていましたし」 「そんなことはない!」 「…住処が余っていなければ造り方を教えてください、自力で造ります。今まで、手厚く保護してくださってありがとうございました」 「駄目だ、俺の保護下から外れたら、お前たちが何をされるか分からない、お前たちに反感を持っているのはレイだけじゃないんだ、…俺はまだ(むれ)を全て統率出来ていない…」 なんとか引き止めようと言葉をつなぐラウ、明らかに動揺している。

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