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告白

「ラウ様、あんたはリーダーにしては優しすぎるんだよ、でもそんなアンタがいる場所だから、オレはずっと居続けたいって思ったんだ」 そんならしくない様子をみて、ふっと笑って自分の言葉で思いを伝え始める。 「アサト…」 「本当にオレたちを助けてくれてありがとう」 本当なら人間なんか助けなくてもいいものを… 「行くな!俺を独りに…孤独にしないでくれ、アサトがいないと俺は…」 屈強な身体からは想像出来ないくらい自信のない言葉が零れた。 「ラウ…」 「ッ、…俺は本当は(おさ)になる資質なんかないんだ。それらしく装っているだけで、親からもらった地位と身体に、αとして覚醒しただけで、なんの力も持ってない」 「そんなことない、ラウはよくやってる。これだけの(むれ)を混乱なく維持してるじゃないか、それに、ラウの遠吠えは凄く美しい。…本当はオレたちが(むれ)から出て行けば丸く収まることなんだろうけど、」 あの遠吠えを聴いただけで、身体の芯が震えるような気持ちになる。力ある者の証。 オレたちの存在が(むれ)に不穏を呼んでしまっているのは確か。レイの一番の望みはそれだから。他の助けられた人間Ωと同様、回復したら出て行くのが当然かもしれないけれど… 出て行くには、オレはラウと心を通わせ過ぎたから… 「駄目だアサト、行くな!…俺は、アサトのことが…」 気持ちが抑えられず、大きな腕で抱き寄せ想いを伝えようとするけれど… 「ラウ、オレも(むれ)は出たくない、だからみんなに認めてもらえるように努力する、オレは大丈夫だから、もうオレたちのこと、必要以上に気にかけなくてもいいんだ」 その腕からゆっくりと逃れながら…ラウの言葉を遮るように口許を抑え、瞳を重ね言い聞かせる。 もともとΩは地位が低いもの、そんなよそ者Ωのオレたちがここに居てはけない。 ラウに愛されるなんて以ての外だ…。 けれど、本当の気持ちはラウの住処にずっといたいし、ラウの傍に居たい、…ずっとラウに愛されていたい。 その為には、まず(むれ)の仲間に認めてもらわなければ…ラウはこの(むれ)のリーダーなんだから…そして出来ることならその弟レイにも認めてもらいたい。 レイとの約束があるから、その想いは今は抑えつける。 「……」 突き放されたように思ったのか、ラウは哀しそうな瞳をして押し黙る。 「ラウ…」 そっと腕を伸ばし困惑している大きな顔に触れる。柔らかい毛に覆われたケモノらしい感触。 「アサト……俺は(おさ)でも、一番欲しいものは何一つ手に入らない」 いつもは凛と立つ耳も尻尾も垂れ下がり、哀しみの底から呟くように言葉を出す。 「ラウ、それは違う」 「……?」 「…もう手に入ってるんだ」 首を傾げ、不安そうにしているラウの瞳を真っ直ぐ見つめながら囁く。 「……?」 「…好きだよラウ」 「え…?」 「オレはもうとっくにラウのものだから…ラウを独りになんかしない、離れていてもずっとラウのこと考えてる……大好きだよラウ」 ラウをぎゅっと抱きしめながら、そっと想いを伝え、そのまま背伸びをして、驚くラウの鼻先に優しく口づけする。 「ッ…アサト、っ俺も好きなんだ!アサトを愛している、本当に大好きだから…」 どこへも行かないでくれ…! 驚きながらも、抑えてきた想いが溢れ出す。 爪が立たないように優しく髪を撫で抱き寄せて、身体を尾で包み込みながら耳元で繰り返される告白。ぺろぺろと、優しく慈しむように唇を舐めてくれる。 「うん…」 ラウからの愛情を充分に感じながらも…未来のために離れ離れになることを決めた。 ラウの住処での最後の夜。 一旦離れることは必要なことと繰り返し話して納得してくれたラウだが、ギリギリまでそばを離れたくなかったのか、自分の部屋に戻ることはなかった。 シィが眠る傍らで、抱き寄せられたまま…二人で語り合いながら、ラウの腕の中で初めて眠りについた。 暖かく、柔らかい毛に覆われて、優しく抱きしめられ、護られているような気持ちになり、久々に心から安心できたような…やすらかな気持ちで寝ることができたのだった。

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