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離れ離れ
次の日から、レイと約束した通りラウには近づかない様にし、獣人族の村の外れの空き小屋にシィと移住した。
壊れかけていた所は直して、もしもの時のために容易に外から侵入できない様に、人間界で学んだ知識を活かして補強していった。
今までは全てラウを通して頼みごとをしていたが、それをやめ群 の仲間にも積極的にコミュニケーションをとり、少しでも群 に馴染めるように努力した。
シィの怪我が治ってから、ラウたちの狩には参加せず、シィと二人で近場を狩に行き、捕らえた獲物は群 に献上した。
そうして獣人族のルールを守って生活を始め数週間が過ぎた。
献身的姿勢が功を奏したのか、常にシィと二人で行動しているからか、あれからレイにも、他の獣人にも嫌がらせを受けることはなくなった。
この数週間、ラウには会いに行けていない。
意識的に会わないようにしているため、姿を見ることもなくなった。
あの日、告白しあって、寄り添って寝たのが最後になるのか…
それを思い出すとラウが恋しくなる時もある。
けど、オレはシィとの生活を選んだんだから、群 の一員として認めて貰えるまで、そこは我慢しなきゃ。
やはり群 の長 の近くに人間のオレは居てはいけなかったんだ。
獣人と人間は交わってはならないという、獣人族の掟がある。
それを長 が大っぴらに破るわけにはいかないのだから。
今日もラウの遠吠えが聞こえる。
凛々しくて美しい、そして優しい獣人。
その声を小屋で聴きながら、貰ってきた分け前を二人で分けて夕食にする。
森での生活も随分と手慣れたものになってきた。戸締りをし、いつものようにシィと寄り添いあって床につく。
夜明け前、不意に目が覚めた。
シィはよく寝てる。
その姿を確認して安堵する。
シィは少しは幸せになれたのだろうか…。
そんなことを思いながら…
眼が冴えて眠れない為、少し外の空気を吸おうと、小屋を出てみる。
まだ朝日が昇るには時間がかかりそうな頃、薄暗くひんやりとした空気が纏わりつく。
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