6 / 27

5

「経験は?」 「え?」 「セックスはした事あるか?」 「い、いえ。」 「女とも男とも?」 「…………はい。」 「本当か?ウサギなのに?未経験だなんて。 だけど、この匂い……」 不意に獣の匂い。その人の顔がユックリと形を変える。 き……狐だ…… この人、獣人だったのか。 思わず身構える。 「…………他の者の匂いはしないな。誰にもマーキングすらされてない…… ウサギでΩってだけで相当狙われてきただろ。まさか発情期が来てないとか?」 獣人は自由自在に化ける事が出来る。基本は頭部が獣、体が人間だけど…… 人間。獣。頭だけ、手足だけ、部分的に変化させ意のままコントロールする。 興奮すると獣に近い姿に変わる……って聞いた事がある。それとも匂いを確認する為? この人……β?αか……? 「や、痩せ過ぎのせいか、貧相な体だし…… 清掃の仕事だったから、いつも汚れてて色気もない……し…… その一度も経験は……ないです。 まだ発情期も来てません。問題ありますか?」 怖くなり、シドロモドロに話した。 「あっハッハッハ!問題ない!むしろ好都合!!ついに俺様にもツキが回ってきた! ウサギの半獣人でΩ。しかも初物! 身構えるな。襲ったりしない。初物に意味があるんだ。獣人α様は他の奴の手垢が付いてるのを嫌う。」 狐はニヤニヤと笑った。 「今すぐ、この条件でサインをすれば…… 借金と同額を即金でやろう。現金でも手形でも振り込みでも好きな方を選べ。 業者をここに呼べば返済の全て、手続きもしてやる。心配ならお前の望む方法で金をやる。」 一枚の紙を渡される。 全額!?チラシにはそんな事は書いてなかった……!あの値段でも相当な高額…… 未経験だから……? しかも、即金。借金が一気に返せる。もの凄い好条件…… だけど、本当にいいのか? 人身売買する奴だ。きっと、ろくな奴じゃない。信じられないプレイをさせられり、痛い事して喜ぶ危ない変態かも。もしかしたら切り刻んで傷めつけて…… 売値でこの値段なんだ。買値はもっと高いはず。こんな大金をポンと出す奴なんて絶対にマトモじゃない。 …………怖い。 怖い…… 足が震えてきた。

ともだちにシェアしよう!