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「経験は?」
「え?」
「セックスはした事あるか?」
「い、いえ。」
「女とも男とも?」
「…………はい。」
「本当か?ウサギなのに?未経験だなんて。
だけど、この匂い……」
不意に獣の匂い。その人の顔がユックリと形を変える。
き……狐だ……
この人、獣人だったのか。
思わず身構える。
「…………他の者の匂いはしないな。誰にもマーキングすらされてない……
ウサギでΩってだけで相当狙われてきただろ。まさか発情期が来てないとか?」
獣人は自由自在に化ける事が出来る。基本は頭部が獣、体が人間だけど……
人間。獣。頭だけ、手足だけ、部分的に変化させ意のままコントロールする。
興奮すると獣に近い姿に変わる……って聞いた事がある。それとも匂いを確認する為?
この人……β?αか……?
「や、痩せ過ぎのせいか、貧相な体だし……
清掃の仕事だったから、いつも汚れてて色気もない……し……
その一度も経験は……ないです。
まだ発情期も来てません。問題ありますか?」
怖くなり、シドロモドロに話した。
「あっハッハッハ!問題ない!むしろ好都合!!ついに俺様にもツキが回ってきた!
ウサギの半獣人でΩ。しかも初物!
身構えるな。襲ったりしない。初物に意味があるんだ。獣人α様は他の奴の手垢が付いてるのを嫌う。」
狐はニヤニヤと笑った。
「今すぐ、この条件でサインをすれば……
借金と同額を即金でやろう。現金でも手形でも振り込みでも好きな方を選べ。
業者をここに呼べば返済の全て、手続きもしてやる。心配ならお前の望む方法で金をやる。」
一枚の紙を渡される。
全額!?チラシにはそんな事は書いてなかった……!あの値段でも相当な高額……
未経験だから……?
しかも、即金。借金が一気に返せる。もの凄い好条件……
だけど、本当にいいのか?
人身売買する奴だ。きっと、ろくな奴じゃない。信じられないプレイをさせられり、痛い事して喜ぶ危ない変態かも。もしかしたら切り刻んで傷めつけて……
売値でこの値段なんだ。買値はもっと高いはず。こんな大金をポンと出す奴なんて絶対にマトモじゃない。
…………怖い。
怖い……
足が震えてきた。
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