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「…………少し。考えてもいいですか?」
自分の置かれてる状況を整理したいし、覚悟も決まらない。
「今まさにウサギの半獣人を欲しがるお客様がいるんだ。心配するな。社会的地位のあるお方だ。
悪いけど猶予はない。店を出て、その間にもっと良い他のウサギの半獣人が見つかれば、お前はいらなくなる。
さっきの提示はこの場限りの条件だ。」
猶予なし。今、この場で決めろって事?
こんな大金だ。仕方ないのかもしれないけど。
…………風俗で働いた方がマシ?
どうしよう……
どうする……!?
「こちらの条件は用紙を見てみろ。
まずは体内にGPSを埋め込む。なーに。少し針の太い注射で済む。手術は必要ない。すぐに終わるさ。」
GPS?発信機?ゾッとして背筋が寒くなる。体内にGPSって何!?恐ろしすぎる話に足がすくむ。
先に大金を渡して、逃げられたら意味がないから?店の方針?それとも、買う人の趣味……?怖い……!
「あと悪いが、学校、仕事はやめてもらう。友人には二度と会えないと思え。身辺整理をして欲しい。スマホも没収。知人に怪しまれないように通報されないように細工。
もし、今回、選ばれなかったらオークションに出品したりしてご主人様を探す。お前の引き取り手が決まるまではここの地下、鍵のかかる部屋で過してもらう。
その間の食事等は心配いらない。こちらで準備しよう。お前は少し痩せ過ぎだから栄養のあるものをシッカリ食べさせてやる。」
軟禁でもするつもりか?事件の匂いしかしない……
通報?細工?身辺整理って……
もしかして、明日の新聞の一面に載ってたりして……
今なら引き返せる?
でも……食事の心配をしなくていい……
ここ、一ヶ月、ろくなものを食べてなかったから。
「親しい友人はいるか?」
「仕事先では半獣人だと馬鹿にされて『Ωのくせに。』『ウサギのくせに。』とパワハラ、セクハラも酷かったし……親しい人なんて一人もいません。」
「最高だな。面倒くさい身寄りはないし友人もいないのか。捜索願いとか出されて、警察が動くのが一番面倒なんだ。
ウサギのΩの半獣人は何人かいるけど、うちには初物が一人もいない。お前には価値がある。
うちのお得意様は金に糸目をつけない方ばかり
だから、お前を連れてけば俺は儲かる。
出来ればこの取り引きを成功させたい。さぁ、決断しろ。もう一度言うが、この金額は今だけ。いつもならこんな高値で買い取りはしない。」
生きてきた中で一度でもあっただろうか。
こんな人生を左右するような大きな決断をする事になるなんて。
運命の分かれ道。
選択を間違えたら、俺はどうなる……?
自分を買ってくるヤクザみたいな狐を頼るしかないのか。
悩んでも俺には選択肢はなかった。
頼れる人も誰もいなくて、不安な気持ちのまま、ペンを握った。
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