狭い部屋には俺と同じウサギの半獣人が数人。 窓一つない箱みたいな部屋。 悲観して落ち込む者、すすり泣く者。 施設育ち。 もしくは家族無し。 性はΩ。 未成年。 半獣人のウサギ。 条件を満たす存在は、世の中でもそう多くない。 自分と同じ境遇の奴が集められてる。理由についてはすぐに察知がついた。 …………ウサギの半獣人のΩが望まれる理由はただ一つ。『繁殖』の為。 俺がここにいるのには訳がある。 返せない借金を精算する為。 子供を孕む道具になる為。 俺は自分で自分を売って、ここにいる。 『俺達、人間と半獣人。種族は違うけど、友達だよな…… 頼む。ここにサインしてくれ。お前にしか頼れないんだ。絶対に迷惑かけないから信じて欲しい。』 好きだった人に言われた言葉。 今、考えると馬鹿だな……って思ってるよ。 俺には彼だけだった。 仕事の同僚。友達……と言っても、時々、食事や飲みに行く位。 出来損ないの半獣人の俺にも優しくて密かに憧れてたんだ。 俺は世間知らずの馬鹿だった。サインした次の日には、彼は跡形もなく消え多額の借金だけが残った。 …………友達だと思ってたのに。 簡単に騙されて多額の借金の保証人になり、返す宛も無いし、彼の居場所も分からない。 『奴は夜逃げした。保証人のお前が責任を取り、全額返すんだ。 ウサギの半獣人に押し付けるなんて、お前のオトモダチはやり手だな。 なんなら割の良い売り専、紹介しようか？ 最悪、オークションで売り飛ばしてやる。』 借金取りに囲まれて絶体絶命。涙の一つさえ出てきやしない。 紙切れ一枚で人生が変わる。 突如、背負った多額の借金。働いても働いても利息も満足に払えず、日に日に膨らみ、借金取りの訪問に怯える毎日。昨日、ついに職場まで借金取りが来た。 同僚達の冷たい目。これまでか…… もう、いよいよ体を売るしかないと諦め半分で風俗街に行くと…… その時、たまたま目に入った。 電信柱に雑に貼られた怪しげな一枚の手書きのチラシ。 『半獣人、高く買い取ります。 特にウサギの半獣人Ωは高額買取。』