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なんだろう……
温かい………
しかも甘くて良い匂い。
…………誰?
俺の頭撫でてるのは。
それに布団がフワフワ……
まるで羽毛みたい。
バチ……
目を開けると目の前に狼がいた。
狼の手が俺の頭に乗ってる。
「ウ、わ……っ!ワァァーー!!」
慌ててベッドから飛び降りる。
…………な、何事!?
「朝から元気だなぁ。オイ。
俺は朝弱いんだ。もっと優しく起こせ。」
狼がアクビをして起き上がる。
真っ黒で艶々な毛並み。
深い琥珀色の瞳。
「…………こ……光牙?」
「狼の姿は初めてだったな。俺、基本、眠る時は狼の姿で寝るから慣れろ。」
「ビックリした……」
「俺は今から仕事に行ってくる。
とりあえずは家の中は自由にしていい。
食事はメイドに好きな食べ物を伝えろ。
外に行きたい場合は危ねぇから執事を連れてけ。」
光牙は狼から人に姿を変える。
「ちょ、ちょっと!!」
ぱっと目を逸らす。
「何?」
「何じゃないです!なんで全裸なんですか!!」
「昨日、散々、風呂場で見ただろ。何を今更。っていうか、敬語やめろ。言う事、聞かないと立てなくなるまで虐めるぞ?」
虐め……叩いたり……とかしなそうだけど……
立てなくなるまで一体……?
「さん付けと敬語、やめます……やめる。」
「よーし。頑張れ。
俺、寝る時、服を着たら窮屈だから何も着ないから慣れるように。
…………なぁ。ユイト。シャツ着せて?」
「ん、な……」
なんてベタな。付き合いたてのラブラブカップル……?新婚さん?
こういうのが好きなのかな?
尽くしたり、甘えたり……
仕方なく置いてあるシャツを手に取る。
「着せてもらうのも、やらしいな。」
全く、この人は。
「ボタンもしてくれる?」
困った事に格好良すぎるその人は綺麗な笑顔で俺に笑いかけた。
「人間の姿で仕事を……?」
「狼の獣人で出社したら、すぐに社長の一人息子だってバレる。親父が社長やってんだけど、内部調査をしてんだ。社長、幹部に媚び売る奴じゃなくて会社の為に働き尽くす人材を探してる。将来の幹部候補と俺の部下探し。
中には鼻の良い奴もいるからな。フェロモンの匂い消しの香水を使って人間に化けて社員に紛れて仕事してる。」
将来は社長って事……?なんか大変そう……
本当に凄い人だったんだな……
「ネクタイも。」
「結んだ事ない……」
「じゃ、覚えろよ。俺は番に毎日、ネクタイをしてもらいたい派なんだ。
朝はネクタイして『いってらっしゃい。あなた。』と玄関でキス。
夜は『ご飯にする?お風呂にする?俺にする?』とかやって欲しいわけ。
ここをこうして……次はこう。」
意外と古風な趣味……
特に突っ込まず、ネクタイを見つめる。
昨夜、Hは失敗に終わった。
…………でも。俺が痛がったら、ちゃんとやめてくれた。無理矢理、押さえつけてやる事も出来たはずなのに……
買ったのがこの人で良かったのかも……
ちょっとだけ、そんなことを思いながら、ネクタイを結んだ。
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