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「ユイト様。朝食の準備が整いました。」
メイドさんが呼びに来てくれた。
「光牙は?」
「俺は朝、コーヒーだけ。
お前はシッカリ食え。」
玄関まで付いて行くと、すでに執事さん達が待機してた。
「いってらっしゃいませ。光牙様。」
「お気を付けて。」
「おー。行ってくる。ユイトを頼んだぞ。」
「はい。かしこまりました。」
光牙は靴を履いてる。
「こ、光牙。あの……」
「どうした?」
おずおずと声をかけると光牙が振り向いた。
「…………い、いってらっしゃい。
あな……あなた……?」
その場にいる全員の目が点になってる。
「ブッー!くっくっく!あは。ハハッ!
昭和の嫁かよ。まだ番でもなければ、結婚もしてねーし!ふ、はははッ!」
爆笑する光牙。
だって……さっき、言って欲しいって……
恥ずかしさで体が熱くなる。
失敗した……
落ち込みながら下を向く。
「ごめんごめん。からかって。ビックリしたけど嬉しいよ。
お前、本当に素直だし健気で可愛いな。」
可愛いって……俺、男なのに。
不意に肩を掴まれる。
チュ……
オデコに感じる熱。
オデコにキス!!
執事さんもメイドさんも見てるのに!!
「…………行ってくる。帰りも期待してるぞ。」
楽しそうにウィンクして、光牙は行ってしまった。
帰りって……
『お風呂、食事、俺にする?』ってやつ?
「では。ユイト様。朝食に致しましょう。」
集まる視線。
ハッと顔を上げる。
執事さんもメイドさんも皆、笑いを堪えてる。
…………は……恥ずかしすぎる!
「ユイト様のお好きな焼鳥とタコ焼きをご用意させて頂きました。他にも朝食らしいメニューをご用意致しました。
どうぞ、おかけになってください。」
お洒落で豪華な料理がズラリと並ぶ。和食洋食色々……朝食とは思えない量……
…………本当だ。焼鳥とタコ焼きもある。
光牙が頼んでくれた……?
「お食事が済みましたら、次は採寸をさせてください。光牙様よりお洋服を仕立てるよう、頼まれておりますので。」
「靴のサイズも……」
ワザワザ服まで?
採寸の間、くすぐったくて、つい耳と尻尾が動いてしまう。でも、メイドさん達は笑う事なく、手際よく採寸を済ませてくれた。
「あとはテーブルマナー、作法、パーティに参加することもあるのでダンスの練習……
習字……ウォーキング……パソコン……
所作を綺麗にしてくれますのでお茶や生花。
こちらがスケジュールです。曜日と時間で書かれてますのでご覧ください。」
「あの、俺……」
こんなの、やった事……
「ご心配なく。経験がないのは光牙様より伺っております。なるべく堅苦しくなく、楽しく満遍なく経験を積めるよう、わたくし共でお手伝いさせて頂きますね。」
や、やっぱり、お金持ちは色々出来ないと困るんだ。大丈夫かな……
不安になりながら話を聞く。
「あとはユイト様が退屈なさらないよう、色々ご準備させて頂きました。光牙様の私物です。外にお出かけの際はお声掛けくださいませ。」
目の前には沢山のゲーム機とソフト。DVDがズラリとある。チェスやオセロ、ボードゲームも沢山。
その日はテーブルマナー、冠婚葬祭のマナー、パソコンを習った。
執事さんもメイドさんも皆、優しくて教え方が丁寧で分かりやすい。頭はパンパンだったけど、少しだけ身についた気がする……
「ユイト様。お疲れ様でした。
夕飯まではごゆっくりお過ごしください。」
とりあえず、部屋に戻ると広すぎて落ち着かない。そっとクローゼットの扉を開いた。
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