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極度の緊張と痛みで最後まで出来なかったのに光牙は俺を怒らなかった。 しかも、怖かったのも手伝い、情けないやら申し訳ないやらで泣いてしまった俺を慰め気遣っててくれた。 気を逸らすみたいにされた食べ物の話。  この人、優しい人かも…… ピーマンが苦手だと俺が言うと光牙は吹き出した。 笑った…… …………笑ってる。 それに好きなものなんて…… 初めて聞かれた。 好きな食べ物…… 「ワタアメです。」 「え?ワタアメ?食べ物じゃねぇっての! くくっ……食事では?」 また笑った…… 笑うと年齢より少し幼く見える。 「焼き鳥とタコ焼きです。」 「アハハッ。屋台繋がりかよ!お前、真面目そうな顔して面白いな。」  光牙は爆笑。 別にウケを狙った訳ではない。 小さい頃、両親がまだ仲良かった時に連れて行ってもらったお祭り。施設には入ってからは一度も行ってなくて…… ちょっとした思い出の味…… 重すぎるから言えないけど。 「せめて、手で。」 「くす。勉強熱心な子は好きだよ。 じゃ……俺の事、いかせて?」 ドキドキして手が震える。 俺と全然、大きさが違う…… こんなの、本当に入るようになるのかな…… 心配になりながら光牙を見上げる。 「何?ユイトももう一回?」 「いえ……ひゃ、ん!」 答えてる途中で握られる。 …………ま、また触られてしまった。 しかも、触れられただけで…… 「ふ、はは。『ひゃん』って……! お前、また勃ってんの?やらしいね。 いいよ。二人でしようか。」 「いいです!今度は俺が…… あ、や……アァぁっ!」 チュ…… またキス…… 「キス好き?可愛い……」 「ぅ……んんッ……あ、ァ……」 体が熱い…… 同時に触られたら訳分からなくなってしまい、沢山キスされながら……してしまった。 ガチャ。風呂場の扉を閉める。 タオルは…… キョロキョロしてると光牙が俺の頭にタオルを乗せてきた。そのまま、ガシガシと拭かれる。 「じ、自分で……」 「俺は甘やかすのが好きなんだ。 その代わり、俺も拭いて?」 大人しく髪と耳を拭かれる。 施設では自分の事は自分でやった。幼稚園児でも小学生低学年でも風呂は一人で入り、自分で洗う。 何年ぶりだろう…… こんな風に頭を拭いてもらうのは…… 拭いてあげようとしたら……身長高過ぎ。 「届かないです……」 「お前、小さいな。身長、いくつ?」 「162.3……4cm。」 「ハハッ!今、サバ読んだ?細か過ぎ。四捨五入で162cmだな?」 「…………光牙さんが大きいだけです。」 「『光牙』!さん付け禁止!あと、敬語も駄目。」 「は、はい。じゃなくて! ……うん?光……牙……?」 「ふはっ。お前、素直な性格だな。 うん。気に入った。」 耳をナデナデされて、狼なのに優しい手だな……なんて思ったりした。 光牙は見た目ほど怖くない…… 初めては大失敗。 でも、少しだけホッとした夜だった。

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