19 / 27

18

ここは皆、執事さんもメイドさんも優しい。半獣人だからって差別される事もない。 けど。 せめて耳位消せたらいいのに…… 「消えろ消えろ……」 自分の耳を触り、念じてみる。 「お前、本当にここが好きなんだな。 何やってんの?呪い?」 がチャ。 光牙がクローゼットを開けてきた。 「お帰りなさい! ち、違うよ。耳!消す練習してて。」 「消せないんだっけ……」 「うん。」 光牙はスーツを脱いでかけた後、俺の隣りに座った。 「要はイメージだよ。」 「イメージ?」 「そうだな…… あんまり願いすぎるとなれない気がする。」「どういう事?」 「獣人でも子供の時は姿を自由自在には変えられないだろ。」 「うん……」 「よく言われるのは『出来ない』と思い込んでると出来ない。」 「…………つまり?」 「『人間になりたい。』じゃなくて、『自分は簡単に姿を変えれる。』、『変化は自在。』、『人間になろう。』位のライトな感じで。」 「やってみる。」 確かに自分には無理だと決めつけていた。 発想の転換。 よ、よーし! 自分は耳を消せる…… 変化は簡単…… 余裕で人間に変身…… 「お!」 光牙が頭を指さす。 「……………あ!?」 思わず触った頭にはウサギの耳がない。 「う、う……嘘!! ……耳ない!?ないよね!? 初めて!耳を消せた……!! 本当にない!! か、鏡……見て来てもいい!?」 「おぅ。見てこい。」 バタバタ…… 鏡の所まで走る。 鏡に映ったのは…… どこからどう見ても人間の自分だった。 嘘みたい…… どんなに頑張っても出来なかったのに! ジワ…… 目から涙が溢れる。 「人間にしか見えない。」 光牙も見に来て、そう言ってくれた。 「なんだよ。泣いてんの?」 「だ……だって……!」 「良かったな。偉い。偉い。」 光牙が頭を撫でる。 「俺、ずっと半獣人って虐められてて。」 「そうか……」 「何度も練習したけど出来なくて、いつも一人だったんだ……」 「こんなに可愛いのに虐めるなんて酷いな。」 俺に『可愛い』だなんていうのは光牙だけ。 涙を拭って上を見上げる。 「諦めてたから嬉しい。 …………ありがとう。光牙。」 「うん。良かったな。」 光牙が優しく笑ったら、胸がギュッとなった。 「じゃ、今夜はサービスして?」 「…………いいよ。」 「なんだよ。冗談だったのに。でも、ウサ耳好きだから、たまには見せてね。」 「うん……」 ウサギの耳、好きなんだ…… 「ありがとう。光牙。」 何回伝えても足りない。 感謝の気持ちを伝えたい…… ドキドキしながら手を伸ばす。 ギュ。 初めて自分から光牙に抱きついた。 光牙って……温かい…… 「…………なんだよ。可愛い事すると襲うぞ?」 光牙、喜んでる……? 勇気出して良かった…… チュッ。 頬にキスされたら、耳がピョンと出てきた。 「ふ……修行が必要だな。」 優しい笑顔…… …………どうしよう。 光牙が笑うと嬉しい…………

ともだちにシェアしよう!