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ここは皆、執事さんもメイドさんも優しい。半獣人だからって差別される事もない。
けど。
せめて耳位消せたらいいのに……
「消えろ消えろ……」
自分の耳を触り、念じてみる。
「お前、本当にここが好きなんだな。
何やってんの?呪い?」
がチャ。
光牙がクローゼットを開けてきた。
「お帰りなさい!
ち、違うよ。耳!消す練習してて。」
「消せないんだっけ……」
「うん。」
光牙はスーツを脱いでかけた後、俺の隣りに座った。
「要はイメージだよ。」
「イメージ?」
「そうだな……
あんまり願いすぎるとなれない気がする。」「どういう事?」
「獣人でも子供の時は姿を自由自在には変えられないだろ。」
「うん……」
「よく言われるのは『出来ない』と思い込んでると出来ない。」
「…………つまり?」
「『人間になりたい。』じゃなくて、『自分は簡単に姿を変えれる。』、『変化は自在。』、『人間になろう。』位のライトな感じで。」
「やってみる。」
確かに自分には無理だと決めつけていた。
発想の転換。
よ、よーし!
自分は耳を消せる……
変化は簡単……
余裕で人間に変身……
「お!」
光牙が頭を指さす。
「……………あ!?」
思わず触った頭にはウサギの耳がない。
「う、う……嘘!!
……耳ない!?ないよね!?
初めて!耳を消せた……!!
本当にない!!
か、鏡……見て来てもいい!?」
「おぅ。見てこい。」
バタバタ……
鏡の所まで走る。
鏡に映ったのは……
どこからどう見ても人間の自分だった。
嘘みたい……
どんなに頑張っても出来なかったのに!
ジワ……
目から涙が溢れる。
「人間にしか見えない。」
光牙も見に来て、そう言ってくれた。
「なんだよ。泣いてんの?」
「だ……だって……!」
「良かったな。偉い。偉い。」
光牙が頭を撫でる。
「俺、ずっと半獣人って虐められてて。」
「そうか……」
「何度も練習したけど出来なくて、いつも一人だったんだ……」
「こんなに可愛いのに虐めるなんて酷いな。」
俺に『可愛い』だなんていうのは光牙だけ。
涙を拭って上を見上げる。
「諦めてたから嬉しい。
…………ありがとう。光牙。」
「うん。良かったな。」
光牙が優しく笑ったら、胸がギュッとなった。
「じゃ、今夜はサービスして?」
「…………いいよ。」
「なんだよ。冗談だったのに。でも、ウサ耳好きだから、たまには見せてね。」
「うん……」
ウサギの耳、好きなんだ……
「ありがとう。光牙。」
何回伝えても足りない。
感謝の気持ちを伝えたい……
ドキドキしながら手を伸ばす。
ギュ。
初めて自分から光牙に抱きついた。
光牙って……温かい……
「…………なんだよ。可愛い事すると襲うぞ?」
光牙、喜んでる……?
勇気出して良かった……
チュッ。
頬にキスされたら、耳がピョンと出てきた。
「ふ……修行が必要だな。」
優しい笑顔……
…………どうしよう。
光牙が笑うと嬉しい…………
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