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第48話 オッサンとの距離感に困惑する俺(5)
いつも通りに大学に行き、何事もなく牛丼屋に出勤する。平和って大事。つくづく思う。
今日のメンバーは、店長にフリーターの原さん。そして、俺と入れ違いに帰るのがあすかちゃんだ。
「お疲れ様でーす」
そう声をかけながら出ていく先に立って待っているのが年下の彼氏くん。毎回、俺と視線が合うたびに睨みつけるのはやめれ。
そんなこんなで平穏無事な時間は、たいして長くは続かなかった。
「いらっしゃいま……せぇ……」
元気よく声を出した先に現れたのは『坊ちゃん』だった。
どこか機嫌のよさそうな雰囲気に、内心ホッとする。俺は『坊ちゃん』につかまらないように、中へ入ろうとしたんだけど、中にはすでに店長と原さんがいて下準備にかかってる。
俺は仕方なく、コップに水を注いでいると、後から前にも『坊ちゃん』といっしょにいた、サングラスの男とスキンヘッドが入ってきて、今日はちゃんと食券を買ってカウンターに並ぶように座ってる。
慌ててコップに水をいれて三人のほうへと向かうと『坊ちゃん』は俺に気付いて、ニヤリと笑う。他の二人もどこかニヤニヤしてる。ううう、こ、怖すぎる。
「い、いらっしゃいませぇぇ」
なんとか作り笑いを浮かべて、三人の食券を受け取る。三人ともが牛丼の大盛の味噌汁・漬物付きのセット。スキンヘッドだけ唐揚げがサイドメニュー。仲良しかよっ! と内心でツッコミながら半券をちぎって渡そうとした時、『坊ちゃん』に右腕の手首を掴まれた。
「うぇっ!?」
「おい、マサト」
「は、はぃぃぃっ」
俺、泣きそう。
そんな俺の気持ちなどお構いなしに、『坊ちゃん』にグイッと手首を引っ張られる。
「お前、藤崎のなんなのよ」
「え、えぇぇ?」
イケメンがニヤついていながらも、耳元には小声ながらもどすのきいた低音。なんなの、このギャップ。女の人だったら、きっとそれがたまらないっ! とか言いそうだけど、俺には只々恐いだけだよっ。
「ふ、藤崎さんは、こ、この前、お世話になったんですぅっ」
泣いていいですか。マジで怖い。
「世話? あいつがか?」
「こ、この前、チ、チンピラがうちの店で暴れてっ……それを止めてくれたんですっ」
「……藤崎が?」
納得いかない顔の『坊ちゃん』は、まだ俺の手首を離さない。何気にしっかり掴まれて、ちょっと痛いんですけどっ!
「……ああ、そういや、警察の人間が事務所に来てましたね」
そう言ったのはサングラスの男。
「そうだったか?」
サングラスの男に返事をした瞬間に、手首が離されて、俺は慌てて半券をカウンターに置いて逃げ出した。
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