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第49話 オッサンとの距離感に困惑する俺(6)

 でも、結局、三人の前に牛丼の載ったトレーを運ぶのは俺。店長も原さんもヒドイ。 「ぎゅ、牛丼大盛、お待たせしましたぁ~」  さすがに一気に三人分は無理だから、まずは『坊ちゃん』とサングラスの分。それから戻って、スキンヘッドの分と。  ホッとして、そのまま戻ろうとして、自動ドアの開いた音で条件反射で声が出る。 「いらっしゃいませ~っ」  視線も自然と入って来たお客さんの方へと向いた。  ……なんと。今日はいつもより早い時間におっさんが現れた。  おっさんはカウンターに並んだ三人には目もくれず、自販機へ向かう。俺は一瞬固まる。どうしよう。何気に昨日の記憶は残ってる。おっさんが怖い顔して、俺を連れ出してくれた。まさか、ここで二人が遭遇することになるなんて。  青ざめている俺に気付いたのは、おっさんの方が先。心配そうに食券を差し出しながら声をかけようとしたら。 「おい、どうした」 「なんだ、大丈夫か?」  まさかの『坊ちゃん』とおっさんのセリフのタイミングが重なった。 「……若頭」  苦々しそうな顔をしたおっさんに、逆に嬉しそうな顔になったのが『坊ちゃん』たち。そう、三人ともニヤニヤしながらおっさんを見てる。なんだ、どうなってるんだ、これ。  オロオロしている俺だったけど、おっさんの食券を受け取り、半分にちぎると、そそくさと厨房の方へと戻る。  チラッと背後を見ると、なんと四人が並んで座ってる。もしかして、四人は、本当は仲良しなのか?『坊ちゃん』たちが最初に来た時の『藤崎の弱み』とかって言ってたけど、対立関係とかじゃないんだろうか。俺は何度もチラ見してしまう。 「高橋くん」  店長に呼ばれて、おっさん用の牛丼を受け取る。今日も大盛でつゆだくだ。 「お、おまたせしました~」 「ん……」  おっさんは無表情にそれを受け取ると、いつものように無言で食べ始める。  そうそう、これがいつもの日常だよ。俺が、ふにゃりと気の抜けた笑みを浮かべたのを、『坊ちゃん』は目敏く見つけたのか、「おいマサト」と、気安く声をかけてきた。 「は、はい~」  作り笑顔で顔を向ける。  案の定、『坊ちゃん』の食いかけの牛丼は、半分は紅ショウガに覆われている。もうすでに、注意するのも諦めたのか、サングラスもスキンヘッドも自分の牛丼を食うのに集中している。  ニヤニヤ笑いながら『坊ちゃん』は言葉を続けた。 「やっぱ、お前が藤崎のオンナなの?」 「……は?」  俺は完全に固まった。

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