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第63話 俺と母親の幸せの形(3)

 きちんと身繕いしてから、スキンヘッドに頭を下げる。 「あ、あの、ありがとうございましたっ」 「んん~、たまたま、連れ去られるとこ、見かけたからさぁ」  無事でよかったねぇ~、なんて言われながら表に出ていくと、なんと『坊ちゃん』……じゃなくて若頭まで立っている。まぁ、スキンヘッドがいる時点で、一緒にいそうだな、という予感はあったけど。 「よぉ、マサト、大丈夫だったかぁ?」  ニヤニヤしながら立ってる姿は、相変わらずのイケメンぶりではある。 「あ、は、はい……」 「どれ、俺の車でお前の家まで送ってやろう」  さすがに、すでに電車は動いていないし、そもそも、ここの場所がわかってない。それでも、若頭の車に乗るのを躊躇していると、おっさんがグイッと背中を押した。 「うえっ!?」 「せっかくだから、送ってもらえ」  まさかのおっさんからの言葉に、ちょっとばかりびっくりする。 「おうよ、乗ってけ、乗ってけ」  若頭が俺の背中を押して、車の後部座席へと押し込んで、その隣に自分も乗り込んできた。若頭が車のドアを閉める前に、おっさんが声をかけてきた。 「若頭、すみません。俺は後片付けしてくんで」 「わかった。おい、圭太」 「は、はいっ!」  どこから現れたのか、思い切りヤンキーっぽい若い男が現れた。あ、あれ? 時々、うちの店に食いに来てる人? なんか大型犬っぽくて、いつも美味そうに食べてる姿を、なんとなく覚えてる。 「藤崎の邪魔にだけはなるなよ」 「は、はいっす!」  この人も関係者だったのかぁ……と思うと、ちょっとびっくり。あの店、武原組の関係者の出没率高すぎないか? そう思いながらも、俺は素直に家に送ってもらうことにした。  車には、スキンヘッドとサングラスに若頭。あの日と同じ状況を思い出して、ちょっとばかり、ビビる俺。そんな俺に気付いているのか、いないのか、若頭が気安い感じで話しかけてくる。 「お前も、モテモテだな、この野郎」  ツンツンと俺の頬を指先で突くの、止めてください。口では言えないけど。 「お、俺じゃないですよっ」 「はぁ? 女の子に拉致られたんだろ?」 「いや、まぁ、そうですけど……俺目的っていうか……まぁ、目的ではあったみたいですけど」  とりあえず、ポツリポツリと説明すると、若頭が顔を顰める。 「なんだ、そりゃ。聞いてねぇぞ。そんな再婚話。おめぇら、なんか聞いてるか?」 「いいえ」 「初耳です~」  そうは言われても、みゆが言ってたことしか、俺は知らないし。困惑気味に三人の様子を見ていると、急に「ああっ」と声をもらした若頭。何か思い出したようだ。 「もしかして、池中組絡みか」 「はぁ、そういや、この前、なんかで呼ばれてましたっけ」 「なるほどねぇ」  三人には何やら予想がついたらしいけど、俺の方はさっぱりわからない。それ以上は説明もしてくれないみたいだ。 「大丈夫だ。お前のことは、藤崎が守るだろうからな」  ポンポンと俺の頭を叩く若頭に、「はぁ」と気の抜けた返事が出来なかった。

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