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第78話 牛丼よりも愛を大盛、お願いします(2)

 バイトが終わって店を出ると、タバコをくわえながら立ってるおっさんがいる。  黒っぽいスーツに、白いシャツを首のボタンを一つはずしてる。うむ。醸しだす雰囲気は、まさにザ・ヤ〇ザ。俺特有のフィルターでもかかってるのか、おっさんの周囲だけ、なんだか空気が違う気がする。  スッと背筋を伸ばし、遠くを見ているような視線には、何が映ってるんだろう。おっさんの姿に、ついつい、足を止めてしまう。 「……帰るぞ」 「は、はいっ」  俺に気付いたおっさんの一声に、ビクッと体がはねる。さっさと歩いていくおっさんの後をあわてて追いかける。  俺が若干背が低めだとはいえ、さすがに親子には見えないだろうとは思いつつ、隣を歩く勇気はない。だから、少し後ろを歩いてしまう。  若い子分くらいには見られるかな?とか、一人で勝手に考えるけど、自分でも無理がありすぎるってのは、わかってる。  後をついていくせいで、おっさんが時々振り返っては俺の存在を確認してる。子供じゃないんだし、そうそう迷子になるわけでもないのに、そうやって気にしてくれることが、なんだか嬉しいとか思ってしまう。  おっさんの車に乗り込んでも、俺たちはたいした会話もない。ムーディーなBGMが心地よくて、無言でいても、その空気はけして重たくない。  流れていく窓の風景を、ぼうっと眺めながら、ついつい、色々と考えてしまう。  俺のバイトの日は毎回、牛丼を食べに来て、帰りにはこうして送ってくれる。  なんでなんだろうって、ずっと不思議に思ってた。確かに、この前、トラブルに巻き込まれたけど、こんなのはしょっちゅう起こることでもないと思う。店だって、今では通常通りだし。  だから、ここまでしてもらうのが申し訳ないって思いつつ、内心は、すごく嬉しかったりする。でも、その理由がわからない。もしかして、少しは俺のこと……とか、勝手に思って期待しちゃったり。  チラリと隣に視線を向けると、前だけを見つめている横顔が目に入る。 「……なんだ」  俺の視線に気づいたのか、おっさんが声をかけてきた。 「な、なんでもないです」  慌てて、もう一度窓の外へと目を向ける。 「フッ」  俺の慌てっぷりに、おっさんが小さく笑ったのが聞こえた。  だめだ……やっぱ、カッコいい。  おっさんに気付かれないよう、想いを吐き出すように小さく「ふうっ」と溜息をつく。  ガラスの反射におっさんの横顔が映る。前を向いている顔が、いつになく優しく見える。  その顔を見て、あの女の子の言葉を思い出してしまった。  おっさんが昔結婚してたってこと。やっぱり、おっさんは女の人のほうがいいんだろうな。俺みたいな、こんなどこにでもいるような平凡な男が相手にされるわけがない。  そう思ったら、胸の奥がキュウッと痛くなった。

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