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第83話 牛丼よりも愛を大盛、お願いします(7)

 目の前にいる天童と海老沢。二人並んで座ってる。  涙は止まったけれど、涙を拭き過ぎて目の周りを真っ赤にしている天童。  長い脚を偉そうに組みながら、思いっきり不機嫌そうな海老沢が、俺を睨みつけている。  本来なら二人の修羅場、のはずが、なぜか俺が責められてる図。  ……おかしくない? 「どういうことも何も、原因はお前だ。海老沢」  怒りたいのは俺の方だっての。  不機嫌そうに文句を言う俺だけど、海老沢の方は納得いかないって顔してるし。  理不尽だ。 「なんで俺よ」 「はぁ? お前、自覚なしとか、最低だなっ」 「……何のこと?」  俺がマジで怒ってることがわかったのか、困惑する海老沢。そりゃそうだよな。俺、あんまり怒ることないし。  そして隣で泣きそうな顔で俯く天童を心配そうに見下ろし、優しく声をかける。 「テンちゃん、どうしたの?」 「……っ!?」  ……おいおい。人が少ないとはいえ、ここ、学食だから。  俺の目の前で天童の手を両手で握りしめるとか、やめれ。天童も恥ずかしそうにしてるだろうがっ。というか、見てる俺も恥ずかしいぞっ。  仕方がないから、俺が代弁するしかない。 「んんんっ、お前、天童と付き合ってるんだろ。それなのに、女と朝から一緒にくるとか、ありえねぇだろ」 「は?」 「は? じゃねぇよ。 お前ら、仲良く入ってきたの、天童が見たらどう思うかって考えろよ」  俺の言葉にキョトンとする海老沢。 「……テンちゃん、高橋に俺たちのこと、言っちゃったの?」 「だ、だって」  俺の言葉を無視して、海老沢は天童に話しかける。  おいおい、距離、近い、距離、近いってば。天童は天童で、困ったような顔してるだろうが。 「……もう……やだ、嬉しいっ」  海老沢は突然天童を抱きしめた。まさに、ギュウギュウと音が聞こえそうなほどに。 「えっ、えっ、えっ?」  抱きかかえられてる天童は目を白黒させている。それは状況のわかってない俺も同様で。  ……えーと。これは、どういうこと?わけわからん。  俺は呆れて二人を見つめるしかなかった。

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