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第3話
「祐羽 、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。それよりカツ丼弁当ひとつ追加で」
父・亮介 の心配に笑顔で応えたものの、正直いうと痩せ我慢をしていたりする。
その間にも容赦なく注文は入るので息つく暇もない。
「次は『出前便』が五件か。多いなぁ」
祐羽は店頭の客とは別にネットから入ったデリバリー注文に、小さく息を吐き画面へ視線を落とした。
平成から令和という時代が移る中で周囲へは大きな新しい商業ビルがたくさん建ち、魅力的な店が増え、あっという間にライバルだらけ。
それに加え、昨今はネットで簡単に家やオフィスへデリバリーが頼める手軽さから、わざわざ足を運び待ち時間ありの従来の店舗受け取りだけの店は格段に売り上げが落ちていた。
それは祐羽の店も同様で、存続させていく為には新しい業態も取り入れる方がいいと決断し、今流行りのデリバリーサービスを行う事にしたのだった。
お陰で売り上げは増えたが忙しさに拍車が掛かり、体力の無い祐羽は家に帰れば風呂に入って疲れから直ぐに寝るだけの様な生活がこの三ヶ月ほど続いていた。
「これ、チキン南蛮弁当です。お願いします」
オーダー品を受け取りに来た提携している出前便の配達員に弁当を渡すと、嬉しいことにそこから次第に昼の忙しさは落ち着いていった。
「もうピークは過ぎたかな」
店内の時計に目を向けて時間を確認すると一時を回っており、そこで漸く肩の力を抜いた。
ひと昔前と違って選択肢が増えた今は、この弁当屋も会社の昼休憩が終わるとあまり買いに来る客は居ない。
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