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第8話

そんな息子の気持ちを見透かしたかの様に「体調を崩される方がよっぽど困るんだからね」と睨んでくるが、目は笑っている。 「仕事は今までだってふたりでやってきたから、少々忙しくてもそれなりに出来るわよ」 確かに今まで夫婦ふたりで切り盛りしていた。 少々ならば、どうにか店を回すことは出来るだろう。 「でもデリバリーの仕事も増えたでしょ?」 「大丈夫よう。デリバリー対応不可にしちゃうから」 「ええっ、でも…」」 香織がとぼけた顔を見せる反面、祐羽は困惑する。 「でもね、祐羽が体調悪かったらそっちの方が心配よ。特にお父さんなんて仕事どころじゃなくなっちゃうでしょ?」 そう言われては反論など出来ない。 亮介はひとり息子である祐羽をかなり溺愛していて、それは香織が呆れる程だった。 それを知っているだけに、祐羽は苦笑いで頷いた。 「確かに…お父さんなら仕事休んで僕の看病しそうだよね」 「でしょう?」 あまりに力強く香織が言うもののだから、祐羽は再び小さく笑ってしまった。 Ωという性別のせいで体力が無く、発情期で動けなくなることもあって社会では生きづらいと感じる事もある。 そんなΩという性を受け、おまけにおっとりした性格の自分は、両親にこれまでどれだけ迷惑をかけたのだろうか。 それにも関わらず、βである父も母も自分を理解しいつも大切にしてくれて感謝の気持ちでいっぱいだ。 迷惑をかけまいと思いながらも、また迷惑を掛けてしまい申し訳ない気持ちになる。

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