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第13話

――ううっ、お弁当やっぱりいつもの袋に入れてくれば良かった。 いつもは弁当箱を袋ごと黒のトートバッグへ入れて持って来るのだが、今日は疲れから脳が働いてなかったせいで見事に忘れて来ていた。 今さら戻る元気も無く「まぁいいか」と気楽に考えホテルに入ったのが間違いだった。 後悔先に立たずとはこの事だろうかと、他の客からの好奇の視線を受けて居たたまれなくなる。 祐羽は客の視線を避けるように小さくなるとコソコソとエレベーターを目指した。 それに乗り込み該当階で下りると、そこにはスイートルーム専用レセプションがある。 何度来てもスイートルーム専用の空間の豪華さに再度、お上りさんな様子を見せた後、祐羽は我に返ってクラークの元へ歩み寄ると声を掛けた。 「あのぅ…、篁さんにお弁当を届けに来たんですが」 「お名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」 「あっ、月ヶ瀬といいます」 「はい、お伺いしております。どうぞご案内致します」 スイートルームへは宿泊者の持つカードキーで専用のドアを通れる事になっており部外者は入れない。 その為、スイートルームへ続く廊下のドアを開けて貰わないとならなかった。 側に居たベルボーイが案内役となって専用ドアをカードキーで開けて貰うと、祐羽は礼を述べて篁が待つスイートルームへと向かった。 ふかふかの絨毯をスニーカーで踏みながら歩くのはまるで雲の上に居る様で、思わず「フンフフン」と鼻歌を歌いつつスキップをしてしまう。 「あっ、ダメだ。お弁当が崩れちゃう」

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