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第27話

はっきりとした目鼻立ちとクールな見た目、それから体格の差も相まって怖く感じていたが、今見る男の目の中にある光はどこか優しく思えて祐羽は心の中で安堵の息を吐いた。 ――さっきは怖かったけど、今は怖くないかも。優しい人なのかな? 人は見掛けで判断してはいけないが、αというだけで警戒心が芽生えてしまった事や疑った自分を祐羽は恥じた。 それを言うならば、αからしたらどうしようもないΩの発情フェロモンを不意打ちで受けた相手のこの男の方こそ被害者と言えるのに、自分の事だけ考えてしまって少し反省する。 ―― 元を言えば、僕がちゃんと飲んでいたらこんな事にならなかったもんね…反省しなくちゃだ。 祐羽の発情がほぼ終わり掛けている事で近づいても大丈夫だと判断したのだろうが、苦しいはずの男が自ら届けてくれた事にも感謝しなければと祐羽は口を開いた。 「あっ、あの。…お薬飲み忘れて、迷惑をお掛けして本当の本当にすみませんでした」 ペコリと頭を下げながら謝った祐羽は、この後どうしていいか分からなくなり、そのままベッドのシーツをじっと見つめる。 まさかαとこんな風に関わる事になるなんて思ってもいなかっただけに、頭も心も対処方法を知らず、相手の出方を待つしかない。 出来ればもう「このまま帰ります!」と言いたいが、ある意味で被害者となった男―それもα且つ篁の関係者を置いて先に帰るのも憚られる。 元々の性格が大人しい祐羽がこのタイミングで声を上げるなど到底無理で、どうしようかと頭を垂れたまま視線をシーツの一点に落とし硬直した。

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