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第28話

すると頭に温かな感触が落ちてきて、突然の事に驚き視線を上げたてみれば、それは男の大きな手だった。 何をされるのかと若干身構えた祐羽の心配とは裏腹に、男は頭をゆっくり二度ほど撫でてきた。 益々戸惑いを深める事になった祐羽は何を思って自分の頭を撫でているのだろうかと男を見つめるが、その表情からは何も読み取れない。 視線だけが絡み続け、居たたまれなくなった祐羽はモジモジしてしまう。 今まで本格的な発情期を迎えた事のなかった祐羽には知識も経験も無い為、考えたところで正しい答えは出てこない。 ――あっ、もしかして発情してあんな事をした後は、お互いにグルーミングするのかも! どうしていいか分からず、とりあえず頭を相手の手にグリグリと押し付けて応えてみる。 すると甘える様な仕草になり、まるで本当にこの男と番《つがい》になった様な錯覚がしてきた。 ――うわぁ、うわぁ…なんだか、僕とこの人が番になったみたい。 一度拒んだ相手をこうして番としてイメージしてしまうのは失礼だと思うが、何故か頭を撫でられる事も側に居られる事も不快に思わないし、逆にとても心地よく感じる。 この男が嫌いかと言われればそうではないが、初めては好きになった相手と――と、Ωらしくなく未経験の祐羽には、どうしても出会って直ぐの相手に身を任せる事が出来なかった。 ――番ってこんな感じなんだろうな。本当に好きな人を相手にしているみたいだ。どうしよう…ずっとこうして頭撫でて貰いたくなってきちゃった。

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