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第5話

入試から三日後。 ミケの元へ合格通知が届いた。 総代である知らせと共に。 ミケは泣いて喜んだ。 すぐに古本屋の主人の元へ行き、通知を見せ、礼を言った。 主人も自分の子のように泣いて喜んでくれた。 (この人の期待に報いるように、いじめられても、蔑まれても、卒業するまでがんばろう) ミケは決意を胸に秘めた。 春になり、桜舞う温かな日。 入学式のリハーサルがあるので、一日早く学園にやって来た。 「副総代の子も来るからもう少し待ってて」 そう生徒会の人に言われ、パイプ椅子に座って待機するミケ。 完全実力主義の学校なだけあって、Ωだからと言って馬鹿にする人はいない。 (この学校に来れてよかった…) 周りをキョロキョロしていると、ミケに影が差した。 後ろを振り返ると、入試の時に出会ったライオン族の男がいた。 「貴殿が総代であったか。これからよろしく頼む」 「こちらこそよろしくお願いします」 「自分はライオン族のライアンという。貴殿は?」 「猫族のミケです」 「ミケと呼んでも構わないだろうか?」 「ぜひっ!」 「では、自分もライアンと呼び捨てで構わない」 「分かりました、ライアン」 自己紹介が終わった頃に生徒会の人がやって来て、リハーサルは滞りなく終わった。 入学式本番は問題なく終了した。 ただ一点、今年の新入生総代がΩであるミケということを除いては。 入学式が終わり、一年の教室に向かう。 席の数は20。 席は自由のようで、一番最後に教室に来たミケの席は空いている一番後ろの窓側だった。 特にやることもないので、席に着き、ボォーっと外を眺めていた。 「貴殿が隣であるか。よろしく頼む」 聞き覚えのある声はライアンだった。 左隣がライアンの席だった。 体が大きいライアンはいつも一番後ろの席になるらしい。 (体が大きいのも考え物なんだな…) 他愛もない会話をしていると担任がやってきて、簡単なカリキュラムの話をして解散となった。 ネクスト学園は全寮制の学校で、敷地内に寮がある。 寮は相部屋で誰と一緒になるか今日知ることができる。 「ミケ、もしよければ一緒に寮へ帰らぬか?」 「喜んで」 ライアンと話すミケをじっと見つめる三人を二人は気付いていなかった。 ライアンと共に寮へ向かう。 入口に寮母さんがいる。 「一年の猫族のミケです」 「同じく一年のライオン族のライアンです」 「待ってたわ。えっと、ミケにライアン……二人とも同室よ」 二人は顔を見合わせた。 こんな嬉しいことはない。 この時の二人は嬉しさしかなかった。 しかし、これが悲劇の始まりだったとは誰も知らない。

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