6 / 14

第6話

入学式の翌日から本格的な授業が始まった。 教科書はなく、その教科の専門の講師から特別授業のような形の講義がある。 ほとんどの者がノートを必死に取っている。 教科書がない分、どの部分がテストに出るか分からない。 ミケはノートを広げ、必要そうな部分をメモ程度に書き、ほとんどスライドを見ていた。 ミケには一度見れば記憶できる能力がついている。 クラスメイトのように必死になってノートを取る必要もなかった。 最初の授業が終わると、教室には死屍累々が転がっていた。 慣れていないのもあるだろうが、かなり高度な授業だった。 そんな授業のノートを取るのだ。 見ながら、聞きながら、書きながら…。 集中力を途切れさせることなく、授業を受けなければならない。 かなりのエネルギーを使う。 頭が糖分を欲していた。 実際、ミケの隣のライアンはクラスメイト程ではないにしろ、かなりのエネルギーを使ったのか、大量の甘味を摂取している。 「ミケも一緒にどうだ?」 「いや、僕は大丈夫です。ありがとうございます」 「貴殿はあまりノートを取っていなかったが、大丈夫か?」 「えぇ。必要なことはメモしましたし、大丈夫です」 話していても食べる手を止めないライアンに苦笑し、ミケは次の授業に備えた。 一日の授業が終わった。 クラスメイトは屍と化しており、指一本も動かせないでグッタリしている者ばかりだった。 ライアンもそれなりに疲れたのが、疲労の表情が窺える。 「ライアン、僕は寮へ戻ろうと思いますが、どうしますか?」 「この後部活で勧誘されているので、その部へ行ってこようと思う」 「勧誘ですか、すごいですね。何部ですか?」 「柔道部、空手部、レスリング部、ラグビー部…あといくつかある」 体の大きいライアンを欲しがる部はたくさんあるだろう。 体験入部とかもしれくるだろうから遅くなるはずだ。 「寮母さんにはその旨伝えておきますね」 「申し訳ないな。よろしく頼む。ではまた後程」 そう言うと、ライアンはさっさと荷物をまとめ、教室から出て行った。 ミケも寮へ戻ろうと、鞄を抱え直し、教室を後にした。 寮へ向かおうと、昇降口で靴を履き替えている時、聞いたことのある声がした。 「ちょっと面貸せや」 入試の時にぶつかった黒豹族の男、レオポルドだった。 他にもチーター族のジャバタスとオセロット族のマルゲイも一緒にいた。 「レオポルド君とジャバタス君とマルゲイ君じゃないですか。どうしたんですか?」 「お前、何で授業のノート取らねぇの?」 「何でって見ていれば覚えるものでしょう?」 「もしかして、一度見たら記憶できるとか言うんじゃ…」 「えぇ、一度見れば覚えます」 男たちは額に青筋を立て、いらついた表情で迫ってきた。 「お前Ωのくせに総代だし、一度見れば記憶できるとか言うし、俺たちのこと馬鹿にしてんだろっ!」 「そんなことないです」 「うるせぇんだよっ!」 全身全霊の一発を鳩尾に食らい、気を失ってしまたミケをジャバタスとマルゲイが抱え、体育倉庫に運んだ。

ともだちにシェアしよう!