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第10話
春、ミケとライアンは無事三年に進級できた。
三年になると、残っているのは4人しかいなくなっていた。
最初の騒がしかった毎日が嘘のように静かになった。
授業についていくのも厳しかったのに、コツさえ掴んでしまえば、あとは理解するのみ。
ミケはネクスト学園史上最も優秀な生徒になった。
入試以降満点記録が途絶えていない。
大体皆入試以降は一定の点数さえ下回らずに済む程度に抑えてくるのに対し、ミケは持ち前の記憶力をフル活用しているため間違えようがなかった。
そのため、教師・講師陣からの信頼が厚く、後輩からの尊敬の念が強いことから、最も信頼された生徒会長としても名が刻まれた。
もちろん副会長はミケ指名でライアンだ。
二人の交際も学園公認で、順調そのものだった。
学園公認だからと言って、羽目を外すようなこともなく、清い仲だった。
そんなある日、毎年恒例の健康診断が行われた。
午後の授業を潰して流れ作業のように検査していく。
なぜ、午後の授業を潰す必要があるのか。
それは最後の検査に理由があった。
最後の検査は多くの生徒が苦手な採血。
血を見て倒れる生徒、針を刺されて倒れる生徒が今年は続出した。
かく言うミケも注射は苦手で、一年の時に針を刺されて倒れてしまい、二年以降は寝た状態で採血してもらうようにしている。
その点ライアンは平気なようで、ミケの採血が終わるのと側で待っていた。
「ミケ、大丈夫か?」
「大丈夫と言いたいけど、実際はあんまり大丈夫じゃないです…」
「手を貸そうか?」
「えぇ。お願いします…。ちょっとふらつく…」
実際ミケの顔色は最悪で、相当採血が苦手なことが窺える。
そっと手を差し伸べ、近くのベンチで休む。
こういう生徒が後を絶たないため、午後の授業を潰す必要があるのだ。
今年は保健室が満員御礼だったのは言うまでもない。
後日、生徒一人一人の元に健康診断の結果が渡された。
ライアンは何の問題もなく、健康そのものとの返書だった。
ミケは結果を見て固まってしまっている。
そっとライアンが横から覗き込むと、『精査の必要あり』の文字。
「ミケ?」
「さすがに精査って面倒くさいですね」
「大丈夫か?」
「あんまり大丈夫じゃないかもしれません…」
「いつ行く?」
「次の日曜に行きます。先延ばしにしててもよくないし、いつかは行かなきゃいけないんですものね」
「付き添っても構わないだろうか?」
「ぜひお願いします。何だか一人だと逃げ帰りそうなので…」
いつも強気なミケが珍しく弱気になっている。
幸い次の日曜は助っ人要請も来ておらず、予定は空いている。
ライアンは力強く頷き、ミケの再検査のために病院に付き添うことにした。
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