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第5話

電車に乗り、そこそこ地価が高いと言われる駅で電車を降りた。 5分歩いたところで、柊木くんが足を止める。 「ここが俺の家」 見上げた先にはとても大きな家と立派な門があった。 小屋には僕でもわかる銀色のエンブレムが付いた外車があった。 「え、でかくない?」 「そう?さ、入って」 「え、あ、お邪魔しまーす」 柊木くんの後ろをそーっとついて行く。 「ふふ、なんで梁瀬くん、そんな泥棒みたいなの?」 「えっ、いや!こんなでかい民家、入ったことないから」 「でかい民家、ふふふ。梁瀬くん、面白いな」 「なっ、笑わなくてもいいだろー!」 「ふふ、可愛い」 「か、かわ!?」 可愛いなんて、この歳になって言われたことないからギョッとする。 同級生の男子に使う言葉か? 庭を歩いて、玄関の扉を開ける。 30代後半から40代くらいの女性が奥から出てきた。 「あら、秋ちゃん、おかえり」 「ただいま。あと、友達の前で秋ちゃんはちょっと…」 「やだ、照れちゃって。そちらはお友達?」 「あ、柊木くん…、いや、秋臣くんの友達の梁瀬奏です」 「かなでくん?いらっしゃい。ゆっくりしていってね」 ぺこりと柊木くんのお母さんにお辞儀をして、歩き始めた柊木くんの背中を追いかける。

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